留学生OB鐘築拓也さんインタビュー

(公社)日中友好協会派遣で中国政府奨学金留学生として2018年に1年間武漢大学へ留学され、帰国後は全日本中国語スピーチコンテストで大学生部門1位を受賞した鐘築拓也さん。現在はオンラインで中国語塾を開校され、SNSなどでも幅広くご活躍中です。

留学を経て中国語普及に携わるようになったきっかけなどインタビューさせていただきました。

留学について

ー留学をしようと決めた時期、きっかけを教えてください。
高校のころから留学したいと考えていました。所属していた神戸市外国語大学は学生の半分くらいは留学に行く大学でした。最初は英米学科を希望していましたが、センター試験の結果により中国学科を選択したのも今となれば大きな転機でした。

ー(公社)日中友好協会の留学を選んだ理由は何ですか。
長く勉強したかったので休学が必要な留学制度を選びました。大学の交換留学だと日本で3年、留学で1年の計4年間になってしまい、中国語学習の時間が短くなってしまうと思ったからです。
この留学制度を知ったきっかけは友達の先輩が中国政府奨学金による留学OBだったので、その友達が紹介してくれました。また、生活費も支給される奨学金だったので、親の負担が少ない点も大きなポイントでした。

ー留学先に武漢大学を選んだ理由は。
中国語がとてもうまい4学年上の非常に優秀な先輩が武漢に留学していたので、自分も武漢大学で勉強してみたいと思いました。武漢は生活にも困らない規模の大きな都市で、かつ日本人が少ないので留学するのにちょうど良い魅力的な場所だと思いました。また、武漢は大学在校生数が100万人で世界一なんです。若者が過ごしやすい場所でした。

ー授業以外ではどのように中国語を使うようにしていましたか。
大学の日本語協会の活動に参加したり、日本語教室に出向き交流をしたり、一人旅をしたりして、中国語を使う環境を作るようにしていました。

ー武漢大学での記憶に残っている体験、エピソードはありますか。
武漢にある日本語教室約20拠点で日本についての講演などをしていました。日本人が少ないため僕が「初めて出会った日本人」というケースが多く、毎回講演会終了後に微信アカウントを交換するために行列ができていました。40~100人規模の講演だったので、微信でつながっても本名と顔が一致せず、誰が誰だかわからないこともありました(笑)日本の若者の中で流行っていること、観光地、お正月文化などを中国語で紹介しましたが、講演を通して武漢の人たちの日本へのあこがれを実感しました。こんなに日本が人気なんだということは知らなかったのでとても驚きでした。

ー留学中に遭遇したハプニングはありますか。
GWで厦門への旅行中に、後払いで予約したはずのホテルが前払いの別のお客さんに取られてしまっていたことが発覚したことです。宿泊先を夜1時まで必死で探しましたが、連休中でどのホテルも満室で見つからず、意気消沈していました。半ば諦めかけていて、なんとなく入った日本料理屋の店長に窮状を伝えたところ、知り合いのホテルを紹介していただき無事解決!このときは本当に中国語ができて良かったと思いました。

ー留学して気付いたことはありますか。
マスコミの報道を見聞きすると中国と日本の関係は悪く、現地の中国でも日本のことは悪く言われているのかなと思いがちですが、実際のところ日本のことを嫌いな中国人はほとんどいないと感じました。また、語学は日本国内でも学べますが、言葉というものは変化するものですし、若者言葉や現地独特の言い回しは実際に留学したから習得できたと思います。現地で中国語を話してみることが大事だと思いました。

 留学後について

ー帰国後、中国語能力を維持するためにどのようなことを心がけてましたか。
現地で知り合った人たちと連絡を取り続けるようにしました。また、それ以外にもHSK取得やスピーチコンテスト出場など目標を立てて、その目標から逆算して学習プランを作成し、実行していました。

ーやり残した、こうすればよかった、など今だから思うことはありますか。
正直やり残したことはありません。ただ周りの人を見てみると、大学の授業ももちろん大切ですが、授業に固執しすぎずに現地でしかできないことも積極的にチャレンジした方がよいと思います。現地の中国人や日本人駐在員との交流はとてもよい経験となっています。

ーこれから留学をする方、迷っている方へのアドバイスはありますか。
迷っているならば絶対行った方がよいです。現地留学でしか学べないことがたくさんあります。現地で中国の方と実際に触れ合うことでこれまでのイメージや感覚は変わってきます。是非挑戦してみてください。

 スピーチコンテストについて

ー帰国後全日本中国語スピーチコンテストに出場されていますが、きっかけを教えてください。
大学でもこのスピーチコンテストは有名で、また大学の先輩も出ていたので以前から知っていました。自分も先輩たちのように中国語で実績を残したいと思ったのがきっかけです。

ースピコンに向けてどのような学習・練習をしましたか。
原稿を書いてから1か月間みっちり練習しました。神戸外大の中国語ネイティブの教授2名にお願いしたり、留学で出会った現地の友人にも練習に付き合ってもらいました。ただ発音をきれいに読むという意識だけでなく、自分の思いや感情をしっかりと伝えられるように練習しました。

ー全国大会の印象はどうでしたか。
観客の方がたくさんいて緊張しました。大学生部門の出場者のレベルが思った以上に高かったことにも驚きました。

ー大学生部門1位を受賞した感想を教えてください。
周りの出場者が本当に上手で正直優勝できると思っていませんでした。結果発表の瞬間は実感がありませんでしたが、家に帰って両親に優勝盾を見せて喜んでもらえた時に実感が湧きました。努力の結果が表れてとても嬉しかったです。

現在の活動について

ーどのような活動をしてますか。
オンラインで中国語塾を運営しています。YouTubeやインスタグラム、TwitterやTikTokなどのSNSを使った中国語普及活動もしています。

ー活動に至る経緯を教えてください。
日本で中国語を勉強する環境が少ないと感じたからです。大学の授業では教科書中心の勉強になってしまい、留学で学ぶような生きた中国語を学べないと思いました。中国語を学びたいのにその環境がないからできないという人がたくさんいると思います。その人たちのために中国語の学習環境を自ら作って、手助けになれればという思いで活動をしています。最初は中国語を学ぶことを反対していた両親も今は応援してくれています。

ーどのような方を対象としていますか。
10代から60代まで、様々な年代の方に教えています。若い方に限らず、中国語を学びたい方全員に向けて発信しています。

ーどのようなことを意識して活動していますか。
とにかく正しい中国語、小手先ではない、ちゃんとネイティブに通用する中国語を教えたいですね。中国語の勉強方法も含め、学校で学べないことを教えることを意識しています。

ーどのようなときにやりがいを感じますか。
SNSのDMにて、直接「わかりやすい」「これまでの勉強方法の中で一番ためになった」などメッセージが来ると嬉しいですね。中国語の学習環境を作れているということにやりがいを感じます。

ー今後の展望を教えてください。
今はSNSで発信をしていますが、SNSをやっていない人にももっと中国語の学習環境を作って広めたいです。教える学生数をやみくもに増やすことは考えていませんが、活動の場は大きくしていきたいです。将来は、オフラインでの講演会や書籍の発行も考えています。中国語学習を通して、学習者の叶えたい夢を実現し、応援していきたいです。これからも頑張っていきます。

鐘築さん運営SNS

ーYouTube

毎日中国語のかね

 

ーInstagram

@daily_chinese55

 

ーtictok

daily_chinese55

 

~インタビューを終えて~
1時間以上に及ぶインタビューでしたが真摯に丁寧にお答えいただく姿勢に、中国語学習普及に対する熱い思いを感じました。今後も鐘築さんの活動に大いに期待しています。是非鐘築さんのSNSご覧ください!