「留学する前のイメージと実際に留学してみて気づいたこと」山形瑞希(上海交通大学)

上海で生活を始めて、早くも三ヶ月が経ちました。既に年の瀬にいることに驚くばかりです。まだ上海に着いたばかりの頃、ルームメイトに「中国での時間はあっという間に過ぎるわよ!」と言われ、特に気に留めることもなかったのですが、今ではその言葉の意味がより深く実感できます。

中国に来る前、中国に関する情報というのは教授や友達から聞く話や、メディアを通したもの、またはいくつかの本から得るもののみでした。「社会主義国であるのに、経済では資本主義を採用しているとはどういうことなのか。」「もしかしたら、すぐに拘束されてしまうのではないか。」などと様々なことを思い巡らしていました。それから、数ヶ月経ち大きく分けて三つのことに気が付きました。順にご紹介します。

一つ目は、中国は大変住みやすい国であるということです。確かに、居留許可が下りるまでの時期は分からないことだらけで混乱していましたが、デジタル先進国と称される中国の購買、送金、物流のシステム、更にはAI技術を用いた無人販売などには、毎度感嘆させられます。購買に関していうと、人々は銀行口座と結び付いた支付宝もしくはwechat payを使って支払いや送金を行うので、手間取ることがありません。友人同士での割り勘も支払い方法が統一されているので、支払いが遅くなったり、待たせたりすることもありません。オンラインショップのアカウントも銀行口座と紐付けされているので、ほんの数秒で支払いが終わります。日本での状況を思い出してみると、毎回現金、〇〇PAY、ネットバンキングなど選択肢が多過ぎて、お金を返すことだけで時間が取られてしまうことがありました。送金するだけのことなのですが、手数料を抑えるのに、どの銀行を使うのかなど、金額が大きければ大きいほど、そのちょっとしたストレスが溜まっていくようでした。中国では みんなが同じシステムを使い、同じ方法でお金の処理をするので、お金のやり取りで時間を無駄にすることはありません。

更に、住みやすいことで言えば、中国のデリバリーサービスの良さを話しておかなければなりません。夜中の何時であろうと、注文したものは30分〜1時間前後で届きます。私ごとですが、誕生日を中国で迎え、その日は夜ご飯を友人たちと食べ、その後夜中の午前3時ごろに私のバースデーケーキを注文することになりました。そんな真夜中でもケーキはしっかり届きました。時間に左右されず、品物を注文できることに本当に驚きました。食べ物以外でも、キーボードやマウスなどの機器や、歯磨き粉や消毒液などの生活用品も気軽に注文することができます。このようなシステムのおかげで、毎日過ごしやすく生活できています。

また、中国では既にロボットが飲み物を販売をしていたり、荷物を運んだりしているのをよく見かけます。上海動物園に行った時は、しゃべるロボットが飲み物を販売していました。人間のように話しかけてくれたりするので、楽しく買い物をすることができました。

飲み物を売るロボット

キャンパス内の商品を運ぶロボット

話を変えて、交通機関に関していうと、日本に比べて中国の交通費は大変安いです。どこかにいくとなった時、気軽に移動出来るし、フラッと散歩もできます。また、自転車も街の至る所にあるので、簡単に安い値段で遠くまでいくことができます。支払いもバーコードをスキャンし、降りた場所に置いておけばいいので楽です。日本にもシェアサイクリングが広がればいいなと思います。

キャンパス内の自転車

二つ目に気が付いたことは、中国人の方はいい意味で人に無関心だということです。つまりは、人のことに深入りしないといった感じです。隔離ホテルの従業員さんや、役所の人の対応をとっても彼らの表情は至って真顔です。あくまでも仕事として会話をしているというような姿勢で接してくるので、初めは少し恐れていましたが、これがこの国のやり方なのだと思いました。役所では、お客さんと役所の人が大きな声で言い争っているのを目にしました。日本だったら、役所の人が謝って丁寧に話を聞くのだろうと考えながら見ていましたが、彼らの言い争いは中々終わりませんでした。日本では過剰なサービスが問題視されているのを聞いたことがあります。日本の丁寧な接客は世界から称賛されるものではありますが、それが当たり前となった日本では消費者側がそれを期待してしまうのが必然となっているのかもしれません。中国の方々は、自分の中で「内と外」をしっかり切り分けているように思います。周りに気を囚われ過ぎず、あくまで自分の内側でできた繋がりをより大事にしているのではないかと感じました。

三つ目は、政策が極端であることです。数日前、コロナに関する政策が変わりました。以前は、寮内に濃厚接触者が一人出たというだけで、3日ほど寮全体が隔離されるという事態になりました。更には毎日PCRをするのが普通であったのに対して、今ではほとんど規制がありません。中国に入国することを決めてから、PCRやビザの申請、十日間の隔離などゼロコロナの規制に振り回されてきました。本当に厳しい措置が取られていたので、今までのは何だったんだろうと思わされるばかりです。中国では、アプリでPCRの場所を簡単に見つけることができます。すぐ近くで見つけることが出来るので便利です。これからPCR検査場も少なくなっていくと思いますが、これによってそこで働いていた人の雇用はどうなるのかと考えたりもしました。