中国留学を終えて ~これからの私~ 浙江大学 外舘祐希

日本に帰国して、はや半年。中国杭州で過ごした5か月を優に超えてしまいました。留学していたのが、つい最近のことのような、でもかなり昔のことのような、不思議な感覚です。世界が思いもよらぬ事態に見舞われて、留学自体も半分が日本でオンライン授業を受ける形となりました。自分たちではどうにもならないこともありますが、この留学期間をできる限り充実させることはできたと思っています。実を言うと、4年生の後期から1年留学に行くことを決めた時点で、就活とは半分おさらばのようなものでした。それが、1月末に日本に帰国したことで、同じ年次卒業の就活生と、それほど変わらずに就活を始めることができました。平日は昼間に就活を進めて、夜から留学先の授業という生活スタイルを送っていました。宿題が毎回出るので、少し忙しい時もありましたが、中国語の勉強で気分転換ができ、そんな留学(+就活)スタイルもありなのかなぁと思ったりもしました。その点では、与えられた機会を活かすことができたかなとは思っています。

留学を経て何が変わったかというと、以前よりも自由な自分になれた気がしています。留学中に一緒に学んだ留学生たちは、多様なバックグラウンドを持っており、彼らと行動を共にしたことで、今までの常識が崩れていきました。例えば、留学に来ている学生は、大学生ばかりでなく、ギャップイヤーや大学卒業後、就職する前に来た等、理由はいろいろです。日本にいると、社会で共有されている”あるべき姿”に縛られがちですが、世界の若者に目を向けると、皆思った以上に自分の好きなように生きていて、肩に力を入れすぎなくていいのか、、、!と思ったりしました。
また授業では、様々な話題を取り上げて、中国の例と学生それぞれの国の場合についてディスカッションすることが多かったです。これが私にとっては、本当に面白い学びでした。各国の教育制度や男女の働き方、就職事情、養子に対する考え方、結婚観、方言、時間感覚等々、これまでの自分が考えていた”普通”は自らが育った文化内だけでの”普通”だったのだと、つくづく思いました。それ以前はメディアを通じてのみ見聞きしていた情報を、生で聞くと、その後それに関するニュースを聞いた時の現実感が違います。以前なら、心のどこかで”遠くの国で起こっている”ととらえていたことが、「そういえば○○がそんなこと話していたなぁ!」と繋がることがあります。
特にルームメイトとは、一緒に出掛けることも多く、部屋でも夜中まで沢山のことを話しました。ヨーロッパから見た中国と東アジアから見た中国など、視点の違いも面白いものです。世界は、今自分から見えているところだけではないのだな、と思うと、今後たとえ困難にあっても、逃げ道はある!と思えそうです。そんなこともあり、留学を通じてメンタルが強くなった気がしています。

日本で中国に関する報道を見て思うのは、”中国ってこんな国”というイメージに合う情報だけが選択され、伝えられているのではないかということです。中国での日常では当然のこと、日本のワイドショーでよく見る陥没事故やトラック事故ばかり起こっているわけではなく、オーディション番組に熱狂したり、雄大な自然を見に行ったりと、本当にカラフルな面を持っているのです。どんな国にも明るい面もあれば、暗い面もあるものだと思っています。どちらかだけを見て、褒め称えたり、けなし散らすのは違うように思います。私は留学を通じて、(もちろん、まだまだ不十分だけれど)様々な切り口から中国を見ることができたと感じています。そして、それらの経験を家族に話したところ、現在では家族の中国に対する見方が少し変わったように思います。色々な中国を知ってもらった上で、相手がどう思うかはその個人の自由ですが、私としては自分が体験した話を身近な人に共有することで、多様な中国について考える材料にしてもらえたらなと思っています。

中国は自分にとって特に思い入れのある国ですし、中国語は趣味としても大好きな勉強なので、これからもずっと関わりを持ち続けていくと思います。まずは来月のHSK6級の試験を申し込んだので、合格に向けてペースを上げています。
最後に、このような貴重な留学の機会を下さった日中友好協会の皆さまに感謝申し上げます。ありがとうございました。