中国での変わった体験 松尾美欧 清華大学

今日まで中国で半年過ごし特に大きなトラブルは無かったが、一度だけタクシーのぼったくりにあったことがある。旅行に行った帰り、北京国際空港への到着が夜中の1時だったため、配車アプリでタクシーを呼んだ。到着したがどこにいるのか、と電話がかかってきたものの、人と車の多さや電話越しの会話が難しく、かなり時間がかかってしまった。何とか呼んだ車を見つけて乗せてもらうことができ、無事寮に到着して降りようとすると、運転手が唐突に話しかけてきた。
「你是哪国人」「你的中文真的不好」
”你的中文不好攻撃”は留学生の間でよく話題にあがるキーワードのひとつである。タクシーで、コンビニで、市場で、外国人が慣れない中国語で手間をかけるたびに、「お前の中国語はへたくそだ」と言われて辛かった、悔しい思いをした、という話をよくきく。優しい中国の友人に甘やかされて生活していた私は、そんな意地悪なことをいう人が本当にいるのだろうかと話半分に聞いていたが、ついに本物にエンカウントしてしまった。失礼なことを言われた怒りもあるが、待ち合わせで面倒くさい思いをさせてしまったしな…という申し訳なさが先立ち、とっさに言い返せずそのまま黙って車を降りた。しかし後から考えれば考えるほど、こっちが頑張って外国語を話しているのに、なぜそんなことを言われなければならないんだとイライラが募り、次に同じことを言われたらなんと言い返すか必死に考えながら眠りについた。そしてその翌日、タクシー料金が2倍請求されてることに気付く。配車アプリの履歴を確認すると、学校前で降ろされた後も1時間ほどドライブしていたことになっていた。你的中文不好以上の衝撃だった。こういう場合どうしたらいいのかと一瞬頭を抱えたが、さすが中国、アプリ内ですべて完結するようになっており、カスタマーサービス内の『予定金額と実際の請求金額が違う』という選択肢をクリックすると、5分後に超過分が返金された。それでも悔しかったので、ネイティブに添削までしてもらった完璧な中国語で苦情を送った。中国語が下手だと馬鹿にされるし、お金もぼったくられるしろくなことがない。もっとたくさん勉強して早く上達しなければと気合が入り、印象に残った出来事だった。