幼年期を過ごした中国は僕のふるさとであり、創作の原点

2020年1月1日号 /

漫画家 ちばてつやさん

1939年東京生まれ。幼少期を旧満州・奉天で過ごす。1956年、単行本作品でプロデビュー。「ハリスの旋風」「あしたのジョー」「のたり松太郎」「おれは鉄兵」「あした天気になあれ」等のヒット作を世に送り出す。講談社児童まんが賞、小学館漫画賞、紫綬褒章、旭日小綬章など受賞。文星芸術大学マンガ専攻教授。日本漫画家協会理事長。「ビックコミック」(小学館)で『ひねもすのたり日記』が好評連載中。

 

実在しているかのようなリアルなキャラクターが時代を超え愛され続けているちばてつや氏の作品。多くの人の心に響くマンガの創作には、幼年期の引き揚げ体験とそれに基づく家族の絆、民族を超えた友人たちとの交流が息づいていた。

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満州・奉天(現・遼寧省瀋陽)の冬は氷点下20度を越える寒さで、幼少期は家で絵本や童話を読んだり、絵を描いて過ごした。敗戦後、父の友人宅の屋根裏に身を寄せた時、弟たちにオリジナルの絵本をつくって読み聞かせたことがマンガ創作の原点となる体験だった―。

満州の記憶、そして終戦へ

東京で生まれてすぐに満州へ渡り、6歳まで奉天で育った。住まいは、父が勤める印刷会社の敷地内にある社宅で、3メートルのレンガ塀に囲まれた中。
「市場からおいしそうな匂いが漂ってきて、親の目を盗んで時々抜け出しました。市場の人がおまんじゅうの切れ端を分けてくれたり、外は楽しかった。よく迷子になって怒られましたが」―(続きは本誌で)