太宰治『人間失格』に魅了 囲碁の知恵 交流に生かす

2024年5月1日号 /

第19回中国人の日本語作文コンクール日本大使賞受賞
吉林大学日本語学部四年
趙 志琳さん

2002年1月中国吉林省長白朝鮮族自治県に生まれ、現在吉林大学日本語学部四年生。第18回中国人の日本語作文コンクール三等賞、第19回中国人の日本語作文コンクール最優秀賞(日本大使賞)受賞。趣味は読書。

*趙さんの受賞作が掲載されている、第19回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集『囲碁の知恵を日中交流に生かそう』は、日本僑報社から好評発売中。

 

第19回「中国人の日本語作文コンクール」最優秀賞(日本大使賞)受賞者である、吉林大学四年生の趙志琳さんが、副賞の「日本一週間招待」を受け、2月26日~3月3日まで東京を訪問した。滞在期間中、福田康夫・鳩山由紀夫両元首相を表敬訪問したほか、外務大臣政務官ら現役国会議員4人とも交流し、教育シンポジウムで報告し、NHKの番組に出演し、朝日新聞の取材を受けた。趙さんはこれらの交流や取材を全て流暢な日本語で行い、各界から高く評価された。日本語勉強を始めてわずか四年の学生が、なぜそんなに高いレベルに達することができたのか。ご本人に話を伺った。(段躍中)


日本語との縁

私と日本語の縁は中学時代にさかのぼります。ある日、友達のテーブルに太宰治の『人間失格』が置かれているのを目にしました。その本は中国語版でしたが、太宰治のくずおれた死の美学に魅了されました。

中国人がいつも円満、幸福を求めようとするのと違って、なぜ日本の作品や伝統文化のメインカラーは幽玄や哀傷なのでしょうか。そんな疑問を抱きながら、日本文学の古典である『源氏物語』や『雪国』などを読み、さらに五十音図を独学で学びました。大学入試が終わり、厳格な学風で有名な吉林大学日本語学科を選びました。

作文コンクールに応募

最初に「中国人の日本語作文コンクール」を知ったのは、大学一年生の担任の先生からでした。当時、多くの先輩が様々なコンクールに参加し、優れた成績を取ってきました。うらやましかったですが、低学年の自分にはまだ科学的で合理的な論文を書く能力が足りませんでした。そして偶然、孫勝広先生が中国人の日本語作文コンクールの第1回目の受賞者であることを知り、孫先生に指導していただくことになりました。

二年生の時に初めて第18回コンクールに参加し、光栄にも三等賞を受賞しました。第19回コンクールでは「囲碁の知恵とポストスコロナ時代の中日交流」という作文を完成させ、最優秀賞・日本大使賞を受賞しました。

訪日の感想

今回の訪日で一番印象的だったのは、立教大学共生社会研究センターを訪問したことです。そこには、20世紀から現在に至るまで在日華僑が発行した新聞などの資料がすべて収蔵されています。

私は第19回コンクールの日本大使賞受賞作に、「故人はすでに亡くなっていますが、中日友好交流の貴重な経験を時間の経過とともに風化させるのではなく、古人の知恵の証である囲碁のように扱い、その醍醐味を味わい、新しい時代の交流に生かすことができると確信しております」と書きましたが、思えば、新聞も囲碁のように媒介物の役割を果たしていると思います。前世紀からの新聞の一部が、私と当時の先輩たちをつなぐ通路になってくれました。これらの新聞は先人たちが中日友好のために努力してきた証なのではないでしょうか。学術研究の初心者として、このような一次資料を目にした私は、とても感動し、言葉にできない気持ちでした。

今後も歴史研究の道において、初心を忘れず、中日交流研究に揺るぎなく取り組んでまいります。