節目に関わりある『封神演義』 より広く魅力を伝えたい

2024年4月1日号 /

「封神演義絵伝」著者
中国文学研究者、北陸大学講師
二ノ宮 聡さん

1982年生まれ。中国文学研究者。中国の民間信仰研究。関西大学大学院文学研究科中国文学専修博士課程後期課程修了。博士(文学)。北陸大学国際コミュニケーション学部国際コミュニケーション学科講師。2023年1月号より本紙連載「封神演義絵伝」執筆。著書に『泰山諸神の信仰の展開』(勉誠社)、訳書に『全訳 封神演義』(全4巻、共訳/勉誠社)ほか。

 

本紙で2023年1月号から連載を開始した「封神演義絵伝」。Web版でも予想以上に人気を博し、広報委員会では当初1年の予定だった連載期間を迷わず延長した。当該コラムを執筆している二ノ宮聡先生に、『封神演義』との関わりについて伺った。


「封神演義絵伝」のコラムを書くことになったのは、知り合いの先生から、こういう企画があって書く人を探しているからやってみないか、とお誘いを頂いたからです。その時は、あまり深く考えずに気軽に執筆を引き受けたのですが、よくよく自分の経験を振り返ってみると、コラムなど書いたことがありません。論文のように資料を使うわけでもなく、文字数も限られ、その中で登場人物の魅力が伝わるようにしなければならず、いざ書き始めてみると、かなり大変な作業でした。

連載が一年を過ぎた現在でも、毎回手探りで文章を書いています。コラム読者の皆さまには、この点をご寛恕いただき読んで頂ければ幸いです。

もともと『封神演義』との出会いは、高校生の時に週刊誌に連載されていたマンガ『封神演義』を読んだことにあります。もっとも当時は、雑誌に掲載される数あるマンガの一つに中国をテーマにした作品があるという程度の認識で、自分にとって特別なものではありませんでした。

その後、大学では中国文学科に進学することになるのですが、これも『封神演義』に影響されたわけではありません。大学で語学・文学・思想といった中国に関する様々な授業を受ける中で、自分の興味が宗教や民衆の活動にあることに次第に気づいていきました。そして大学院進学後、中国の神々や民間信仰をより詳しく勉強する中で、これらに対する『封神演義』の影響や、道教の寺院では実際に神仙が祀られていることを知っていったのです。

現在の私の関心は、中国の民衆宗教やそこで祭祀される神々が中心であり、『封神演義』が中心であるわけではありません。しかしながら、こうして振り返ってみると、今までの経験において、それぞれの節目に『封神演義』が少なからず関係しているとも思えます。数年前には『全訳 封神演義』として翻訳書を出版し、現在はコラムを書くなど、大きな仕事にも恵まれました。

大学の教員として教壇に立つ現在、授業の多くは中国語を担当しており、文化や歴史を教える機会はなかなか少ないです。しかし、大学の授業だけではなく、コラムなどで中国文化の面白さを発信する機会は様々あります。

また、中華圏では毎年のように『封神演義』が映像化され、その人気は今なお高いものがあります。今後は、小説に限らず『封神演義』全体の魅力を広く伝え、多くの人により興味を持ってもらえるようにしていきたいと思っています。

(本紙広報部)