中国選手に勝つ試合も増えてきた。 大きな差は感じていない

2019年1月1日号 /

©国際卓球連盟

卓球選手
張本 智和 (はりもと ともかず)さん

2003年生まれ、宮城県仙台市出身。木下マイスター東京所属。中国出身でコーチの父と、元中国代表選手の母のもとに生まれ、2歳で卓球を始める。14年に日本国籍取得。16年にJOCエリートアカデミーに入校してからは、国際卓球連盟主催のツアー大会で優勝や準優勝を数多く獲得。妹・美和も2018年全日本選手権で優勝経験を持つ

 

史上最年少優勝。昨年12月に韓国・仁川で開催された卓球のITTFワールドツアー・グランドファイナル男子シングルスで快挙を成し遂げた15歳の勢いは止まらない。

全日本選手権6連覇、JOCエリートアカデミーへ

中国の元卓球選手を両親に持ち、初めてラケットを握ったのは2歳の時。「両親が仙台の卓球場でコーチをしていたので、物心ついた時から卓球場で遊べる環境にありました。小さい頃から負けず嫌いで、あまり練習は好きではありませんでしたが、試合をするのは好きでした」
小学1年生の時に出場した全日本卓球選手権大会バンビの部で優勝し、以来バンビ・カブ・ホープスで無敗の6連覇を果たす。「怪童」「神童」などと称され、その名を日本中にとどろかせた。トップ選手になるために両親から指導されたことは、「基本の徹底と正確なフォームでの打法」だという。
2016年からは親元を離れ、東京にあるJOCエリートアカデミーに入った。オリンピックを目指すユース世代の一人に選ばれ、活躍の場を世界へと移している。また、昨年11月に開幕した日本最高峰の卓球リーグ・Tリーグでは木下マイスター東京の選手として各地で試合をこなす。
一方、卓球から離れれば15歳の中学生。地元仙台の楽天イーグルスを応援する野球好きで、「始球式をさせていただいた時は嬉しかったです」とあどけない表情を見せる。また、「遠征先にも学校の課題やドリルを持っていき、移動の時間などに勉強するようにしています」と学業との両立にも前向きだ。

越えなければならない〝卓球王国・中国〟の壁

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世界のトップを目指す場合、〝卓球王国・中国〟の存在は越えなければならない大きな壁だ。その中国に勝つために、さらに磨くべき自分の武器について聞くと、「台上技術の精度と安定性を上げたい」という。「バックハンドは他の選手に負けないと思っています」
昨年4月のアジア杯では、「小学生の頃からこういうプレーをしたいと思っていた」と手本にしていた中国の樊振東選手(世界ランキング1位)から初の白星を挙げた。続く6月のジャパンオープンでは、五輪金メダリストの馬龍選手に打ち勝った。
「中国選手に勝つ試合も増えてきた。以前のように大きな差があるようには感じていません。しかし、競った場面で勝ちきることができるように、もっと威力ある決定打を打てるようになりたい」。来年に開催がせまる東京オリンピックの出場に向けて、今年は勝負の1年になる。やるべきことは明確になっているようだ。
「まずは確実に東京五輪に出場し、活躍できるように頑張りたい。また、その次の五輪も出場し、小さな子どもたちのお手本になるような選手になりたい」。計り知れないポテンシャルを秘めた「怪童」の次の一歩、次の成長が、日本卓球界の未来を切り開く。
(北澤竜英)