知的財産分野で、 中国は日本から多くを学んだ

2018年8月1日号 /

中国国際貿易促進委員会特許商標事務所
駐日本工業所有権連絡事務所代表
呉 越(ご えつ)さん

1961年河南省南陽市生まれ。洛陽大学日本語学部卒業。中国国際旅行社本社観光貿易二部副部長、中国康輝旅行社本社日本部副部長兼日本支店営業部長を歴任。この間、働きながら学び2002年に中国社会科学院大学院金融科修士課程修了。05年に現在の中国国際貿易促進委員会特許商標事務所(http://www.ccpit-patent.com.cn/ja)へ入所し、知的財産文献の翻訳とチェックを担当、国家一級翻訳者資格を取得。18年1月から現職

 

 

昨年設立60周年を迎え中国で最も長い歴史を持つ「中国国際貿易促進委員会特許商標事務所」。その日本連絡所代表を今年1月から務めている。北京に本部を構える同事務所は、特許や商標、著作権、ドメイン名、商業秘密、トレードドレス、不正競争などの知的財産分野全般において、国内外のクライアントにコンサルティング、出願、調停、行政保護及び訴訟などのサービスを提供している。

旅行業から転職し異業種を一から学んだ

河南省出身。洛陽大学で日本語を専攻し、日本語とともに日本文化にも大いに興味を持った。卒業後は中国国際旅行社に就職し日本人と接し、その後中国康輝旅行社日本支店営業部長として日中間を頻繁に往来。日本と長く関わってきた。

仕事の傍ら中国社会科学院大学院金融科修士課程を修了し、異業種への挑戦として中国国際貿易促進委員会特許商標事務所へ入所したのは2005年。40代半ばになってからの転職だったが、入所後は知的財産文献の翻訳に従事し一級翻訳者の国家資格を取得。昨年末の同事務所前代表の帰任にともない首席代表就任が決まった。

今や知財保護は国家の発展に関わる重要なテーマだ。中国では1984年に特許法が公布。「当時実務経験に乏しかった中国の弁理士たちは日本での研修などを通じて多くを学んだ」。国の発展とともに知的財産の管理と重要度は年々増し、中国の商標登録出願件数は16年連続で世界一になっている。

同事務所は85年に東京に連絡事務所を開所、知財相談窓口として中国へ進出する日本企業をサポートしている。ネットの普及で情報が溢れている時代であるがゆえに、相談が無料なこともあり、有用な情報を求めて、中国知財に関する問い合わせや相談が増えているという。ニューヨーク(米)、ミュンヘン(独)、マドリード(スペイン)、香港にも事務所がある。

「日中は互いの立場を理解することが重要」

これまで短期滞在経験はあったものの、6か月以上の長期で滞在するのは今回が初めて。日々の相談対応に加え、中国からの訪日団の対応調整に忙しい中、「万巻の書を読み、万里の道を行く」を心掛け、日本文化への理解を深め、暮らして初めてわかる日本をあらためて実感しているという。

「中日関係は、正常化させた先人たちの努力を大切にしながら、互いの長所を学び、理性的に問題解決に努めることが重要。仲のよい夫婦だって時にケンカすることがある。中日もそれと同じで互いの立場を理解することが友好を築くためには重要になる」。日中友好への思いを聞くと、笑みを絶やさずに穏やかな口調で語ってくれた。
(丸田智隆)