日本のポップカルチャーと中国を 融合させた映像も作ってみたい

2018年5月1日号 /

映像ディレクター
張 時偉(ちょう じい)さん

1986年上海生まれ、90年から東京で生活。高校卒業後に渡米しShoreline Community College映画科、Art Center College of Design 映画科で学ぶ。その後は日本の東放学園プロモーション映像科を経てフリーの映像ディレクターに。東京MXテレビの番組『明日どこ行くの?』や、ANA国際線で放送の「日本の『匠』シリーズ」全作の監督・撮影・編集を務めたほか、ドキュメンタリー、CM製作などで幅広く活躍。影響を受けた映画はリドリー・スコット監督の『グラディエーター』(第73回アカデミー賞)。公式サイト(https://www.jccjiilm.com)で映像作品を公開中

 

 

短編映画の分野で、近年国際的な評価を上げている。今年3月、香川県・豊浜町の郷土祭りを撮影したドキュメンタリー『豊浜ちょうさ祭り(TOYOHAMA CHOSA FESTIVAL』が「国際観光フィルム・グラフィック・マルチメディア賞」の五つ星最優秀賞と、「ゴールデン・シティ・ゲート賞」の三つ星特別賞を中国人初として授賞した。「監督、撮影、編集のすべてを自分で行うのがこだわり。まだまだ修行中です」

4歳から日本で生活叔父の影響で映画好きに

上海出身。4歳の時に来日した在日華僑二世。家庭では上海語を話すが、日本の小中高校に通ったため、日本人と変わらない日本語を話す。「『こないだの選挙は行った?』なんて、日本の友人でさえ僕が中国人であることを忘れることがあります(笑)」

同居していた叔父の影響で小学生の頃から映画好きに。卒業式では「映画監督になりたい」と宣言した。

映画批評・研究を重ね、高3の夏に初めて自主作品を撮ったが映像制作の難しさを痛感した。「あの失敗をきっかけに映画をより深く、専門的な視点で見るようになった」と振り返る。

高校卒業後は米国へ渡り4年間留学して映画制作を学び、その後は日本の専門学校でさらに映像技術を磨いた。「あの頃は意欲にあふれ、学校の課題以外でも毎日映像制作に明けくれてました」。好きな監督は巨匠のリドリー・スコットやデビット・フィンチャーだという。「彼らはCMやミュージック・ビデオなどの映像監督から映画の世界へ進んだ。自分も同じようなキャリアを積みたい」

北京、上海で武者修行フリーとして経験積む

専門学校後はさらなる高みを目指して中国で武者修行。フリーの映像ディレクターとして北京、上海を拠点に企業CMなどの仕事をこなした。「中国人はいつも『大気!』と言って豊富な資金でインパクトのあるものを求めてくる。時に高い報酬に対して自分の能力は見合っているのか?と考えることもありました。一方で、日本の専門学校時代の友人はハングリーな環境の中でレベルの高いものを作っていた。これではまずいな、と思いました」

約1年半の中国生活を経て、テレビ局の番組制作の依頼を受けたのを機に15年9月から日本で活動している。現在は番組制作と並行して日本で活躍する中国人を紹介する短編ドキュメンタリーなども手がけ、仕事の合間を縫って自主作品を日本国内外の映画祭などに出品している。「目標は長編映画の監督ですが、映像が好きなので映像制作にも広く関わっていきたい」

近頃は取材も増え「日中」を少し意識するようになったという。「アニメや漫画などの日本のポップカルチャーを見て育ちました。中国と融合させた映像も作ってみたい」
(北澤竜英)