鉄道に乗りたくて中国に来ました。 当初は5年で帰るつもりでしたが…

2018年2月1日号 /

広州安住信息科技公司運営経理
阿部 真之(あべ まさゆき)さん

1973年埼玉県大宮市生まれ。幼少期はブルートレインブームを過ごし、社会人になると、香港返還に伴う大陸直通列車の運行と、列車速度が毎年上がるダイヤ改正を続ける中国鉄道に衝撃を受ける。2006年以降は拠点を広東省広州市に移し、中国鉄道の魅力を発信。11年に『中国鉄道大全』を上梓。月刊誌『Whenever広東』で「中国鉄たび道中」(現132回目)を連載中で、多くの鉄道ファンから支持を得ている

 

学生の頃から鉄道ファン。実家が大宮駅(埼玉県)に近く、東北や上信越方面を結ぶブルートレインなど魅力的な列車が集まる大宮駅に通ううち、鉄道の魅力にどっぷりとハマった。

しかし、JR発足後は好きだった列車が相次ぎ廃止に。楽しみが半減してしまい、やがて関心は中国の鉄道に移るのだが、中国との出会いは、鉄道よりも「三国志」が先だった。1996年、「三国志」ゆかりの地を巡る10日間のツアーで、完成したばかりの北京西駅から鄭州まで「軟臥(一等寝台)」に乗車し、そこで久しぶりにゾクゾクするような感覚を味わった。「完全に中国の鉄道に魅了されました。寝台列車はどこでも当たり前に走っているし、地方にはSLも残っている。時刻表を見て、こんなにたくさんの長距離列車が走っているのか、と感動しました」

鉄道に乗りたいから中国での生活を選択

日本で就職したものの、中国への思いはますます強まり、2004年に北京師範大学に留学。その後、06年からは広州に定住し、日本人駐在員向けの月刊誌『Whenever広東』の編集長を経て、現在は広州安住信息科技公司に籍を置き、これまで同様に飲食店や観光情報などを提供している。この間、11年には鉄道趣味の集大成といえる労作『中国鉄道大全』を出版し、ファンから好評を得た。

「ご主人が中国へ赴任することになり、面白そうだからと購入してくださった主婦の方と現地でたまたま知り合い、『あなたが著者だったの』と驚かれたこともありました」

仕事は忙しいが、休日のたびに「乗り鉄」(乗ることが目的の鉄道ファン)をエンジョイする生活が続く。高速鉄道網が整備されたおかげで、遠出も可能になった。「中国の鉄道に乗りたくて、中国へ来たようなものです。当初は5年くらいで帰るつもりが、現地の生活にすっかり馴染んでしまって」と苦笑いする。

特に思い出深い列車は、いずれも当時の最長距離列車だった上海発ウルムチ行き、広州発ラサ行きと、北京と返還直前の香港を結ぶ豪華直通列車。「香港行きは、シャワー室までついていてびっくりしました」

人が親切で寛容なところが広州の魅力

国際色豊かな広州の雰囲気が気に入っている。

「広州の人は親切で寛容。食べ物は美味しいし、都市的な中にも緑が多い。嫌々赴任してきた人も、みな離任時には名残惜しくなるんですよ」。新線の開業が目白押しの中国。まだまだ乗りたい列車や路線は尽きず、しばらく広州を離れられそうにない。

今年の目標は、『中国鉄道大全』以降の蓄積したデータをまとめ、2冊目の鉄道本を出すこと。そして、「趣味を理解してくれる女性と結婚したいですね(笑)」
(内海達志)