訪日中国人は「癒やし」を求めて来る。日本の若者には、新しい中国の魅力を

2017年12月1日号 /

中国国家観光局駐日本代表処首席代表
王 偉(おう い)さん

1963年遼寧省生まれ。大連外国語学院日本語学部卒業。87年中国国家観光局入局、同年立教大学へ留学。91年中国観光管理幹部学院教師。94年福建省アモイ市建発集団に入社、同グループのマンダリンホテル執行副総支配人、シーサイドホテル総支配人、コロンス島投資会社総支配人などを歴任。アモイ理工大学観光学院院長、アモイ市人民対外友好協会執行副会長を経て今年7月から現職。著書、訳書多数

 

 

今年7月に中国国家観光局の日本駐在代表に就任。日中首脳会談が密に行われるなど両国関係に明るさが見えつつある中、「中日関係の厳しい時期は切り抜けたのでこれから関係はよくなる。新しい中国の魅力をアピールしたい」と意気込む。

福建省でホテル経営などに長く携わった

遼寧省出身で異例のキャリアを持つ。中国でもトップクラスの日本語教育力を誇る大連外国語学院を卒業後、1987年に来日し国費留学生として立教大学へ。その時に師事したのが日本で初めて観光学科を立ち上げた前田勇教授(現名誉教授)だった。前田教授から質の高い観光業を学ぶだけでなく、旅行会社の関係者らと週1回は会食するなど、机上の空論ではない現実的な観光業を学んだ。

約2年半の留学を終えて帰国後は、中国観光管理幹部学院で教壇に立ち、当時中国で産声を上げたばかりの観光業を担っていく人材育成に力を注いだ。その生徒たちは今、地方の観光局やホテル、旅行会社などで幹部として活躍している。

その後は福建省のアモイ市でシーサイドホテルの総支配人を務めるなど複数のホテルや投資会社の経営に携わりつつ、2015年にはアモイ理工大学に観光学院を立ち上げ学院長に就任、今年30年ぶりに東京へ戻ってきた。この間も1年に何度かは来日していたため、バブル絶頂期からデフレ不況、そして現在までの日本社会の変化を肌感覚で体験してきたことになる。

今後の観光PRに異業種経験生かす

歴代の首席代表とは異なる経歴、異例の人事に思えることについては、「異業種の経験を生かすことで中国が本気で観光業を改革したいという意力の現れ」と話す。サービス業に従事していたためか、取材の対応も気さくで話しやすい。こうしたところにも異業種で培った経験が生かされているようだ。

今年、訪日中国人数は過去最高を更新する見込みだという。「多くの中国人は、日本語の『癒やし』から90年代後半に作られた中国語の造語〝治癒系〟を求めている。観光だけではなく、食事や買い物でも癒やされる日本は人気が高い」。一方、訪中日本人を増やすために、「日本の若者に中国の新しい魅力を伝え、特徴ある民泊などを増やして中国で非日常体験をしてもらいたい」と考えている。

「来年は、毎回テーマを設定したイベント型の観光説明会を少なくとも6回は実施したい。また、子どもが描いた絵葉書や訪中した日本の若者の感想文、写真などを展示する参加型のイベントもやりたい。日本の若い人へ発信するためにも、既存メディアに加えてインターネットなども総活用して中国のイメージアップを図っていきたい」と抱負を語った。(丸田智隆)