みんなに“おいしい”を届けたくて

2021年10月1日号 /

「中国家庭料理の味」を伝え続ける

料理研究家

小薇さん

中国新疆ウイグル自治区生まれ。上海東方放送で人気アナウンサーとして活躍し、1995年正式来日。中国語放送でアナウンサーをつとめ、2000年朝日カルチャーセンターで料理教室を持ち、 中国家庭料理を教え人気を獲得。2006年料理雑誌「エル・ァ・ターブル」で評価され、第3回若手料理業界人フードバトルのグランドチャンピオンを受賞。2006年「幸せ中国家庭料理 シャウ・ウェイの美食サロン」を主宰。2019年中国大連で開かれた中国料理世界大会に日本チームを率いて参戦し、団体銀賞、魚料理部門金賞を獲得。2020年東京・中野富士見町に「小薇点心」をオープン。著書に『愛しい上海料理』『シビレシピ』など多数。テレビ番組、商品プロデュース、レシピ開発などでも活躍中。

 

美食の追求。その飽くなき情熱と愛情にあふれた2つの家庭で、小薇さんは育った。

幼少期を過ごしたのは、まだ食材が豊富に手に入りにくかった時代の上海。早朝から市場に出かけ、工夫をしておいしい料理を食べさせてくれた祖母のおかげで、鋭い味覚が養われた。

小学校入学から高校までは、新疆ウイグル自治区で。オペラ歌手の母は、ときに数カ月におよぶ公演を終え帰宅すると、どんなに疲れていても、必ず手打ち麺や餃子、肉まんなどの点心を作って食べさせてくれた。

植物学者の父も料理が得意で、野鳥の料理や、山で採った山菜やキノコを使った薬膳料理などを作ってくれた。父の薬膳料理のおかげで、当時ほとんど病気をしたことがない。

そんな祖母や両親による愛情たっぷりの家庭料理と、多民族が暮らすウイグルの食文化の多様性の影響を受け、ユニークでクリエイティブな「小薇料理ワールド」は誕生したのである。

より素敵な料理を

上海で人気アナウンサーとして活躍していた経験から、来日後も中国語放送のアナウンサーをつとめながら日本語を学び、中国語講師になると、そこでふるまった中国家庭料理の味が評判に。請われて料理教室も開講すると、たちまち大人気になった。

しかし、「人に教えるからには、プロになって、よりおいしい、より正しい、より素敵な料理を教えたい」と、上海の老舗で雑用をしながら料理を教わり、さらに腕を磨いた。

料理雑誌のフードバトルでグランドチャンピオンを受賞し、サロンを主宰するようになったのは2006年。「予約がとれない料理教室」と大好評を博し、初のレシピ本を2冊続けて出版すると、それも広く喜ばれた。メディアへの露出も増え続け、数々のテレビ番組に出演し、高い評価と人気を獲得し続けている。

2019年には、中国料理世界大会で日本チームを率いて参戦し、見事、銀賞と金賞を受賞。師事を願う人は増えるばかりで、仕事は順風満帆であった。

研究を重ねた目玉商品

2020年、新型コロナの感染拡大により状況は一変した。だが中国で師匠が出前をしていると知り、「冷凍保存もできる、得意の点心」のテイクアウト販売を思いつく。そして「子供の頃に食べた、肉汁いっぱいの肉まんを目玉商品に!」とひらめくと、直ちに研究を重ね、レシピを開発。利益を考えたのかと心配もされたが、「みんなが〝おいしい〟と喜んでくれればいい。何より、料理を作って届けられるだけでありがたい」と、東京に「小薇点心」を構え、「爆汁ポークまん」と名付けて販売。一気にヒット商品になった。

今後の目標は、「いつまでも元気で、人においしい料理を作り、教えられる自分でいられるようにがんばる」こと。料理教室を始めた頃の生徒たちとは、今でも「この料理の作り方を教えてほしい」と宿題を出されるような、素敵な関係が続いている。これからも誰かのためにという純粋な思いで、中国家庭料理の味を伝え続けていくだろう。