挑戦で掴んだもの

2021年12月20日~22日、銀座博品館劇場で本番を迎えた「王文強の変面の世界」。

特に試行錯誤をしながら作り上げてきた変面一人芝居「マスク氏の冒険」は未知のジャンル。舞台でお面をつけながら話す日本語のセリフはお客様まで届くのか、お面の変化がわかりやすく伝わるのか、そもそも変面を使った現代劇は受け入れられるのか……等、様々な思いがあった。

しかし、幕が上がるとそんな思いはどこかへ吹き飛んでいった。十数年前に中国で伝統劇役者をしていたときは想像もしていなかった日本での芝居。コロナ禍でも観客の前で演じられる喜びを感じながらステージを重ね、4ステージ終演後には、観客の拍手からも一定の手応えを掴むことができた。

変面一人芝居「マスク氏の冒険」より

もちろんまだ改善点は多くあるが、何度も諦めそうになり、不可能とも思えた今回の作品に挑戦したことで、私にとっては変面を通じて「自分の知らなかった一面」を知ることができた。

また、嬉しかったのは、多くの人が単なる変面の「仕掛け」や「早技」という部分だけでなく、「変面と現代演劇の融合」という、新しくも純粋な舞台芸術を楽しんでくれたことだ。これは演出家の加藤先生や、日本のスタッフの皆さんと一緒になって作ったからこそできたことだと思う。

今年は日中国交正常化50周年の大きな節目の年。しかし、両国の文化交流は遥か千年以上前から脈々と続いている。「互相学习,共同发展(お互い学びながら、共に発展していく)」の精神で、両国の文化交流にとっても大きな「成果」を掴む年になることを願っている。

文◎王文強(おう・ぶんきょう 変面役者)