蘭州牛肉麺を食べに

2024年1月1日号 /

今年の国慶節の連続休暇は張掖・蘭州を旅した。いずれもシルクロードの中継地として古い歴史を持ち、そこを辿ってきた仏教信仰の証と言うべき石窟の仏像群を始め、張掖では丹霞地形と呼ばれる堆積岩群の雄大な景色を、蘭州では大陸の母の恵みとも言うべき黄河の滔々と流れる様を楽しんできた。

黄河とそこにかかる中山橋

さて、蘭州といえばやはり蘭州拉麺を食べるのがこの旅の楽しみの一つであった。蘭州は地名なので、現地ではただ「牛肉麺」というが、戒律として豚を食べないイスラムの人々も多いこの街では欠かせないハラル料理の一つである。

蘭州の牛肉麺セット

牛肉麺の特徴は五つ。“一清 二白 三緑 四红 五黄”である。スープは清く透明でそこに大根の白、香菜(パクチー)の緑、辣油の赤、そして麺の黄色が混在する。

注文の仕方も面白く、出来合いのものではなく客の注文に合わせた太さの麺をその場で作る。太さは一番細い「細的」から「三細」「二細」と太くなる(二細の方が太い)他、韮のように平たい形の「韭叶」、細的より更に細い「毛細」、きしめんの何倍も太い「大寛」、三角形の「三棱子」など千差万別で、注文する客側も各々に自分が好きな麺の太さを知っている。注文を聞くと誰も彼も皆鮮やかな手つきで一人分の生地を手に取り伸ばし、両端をまとめてさらにそれを伸ばし…としていくうち、一つだった生地が二本に、二本が四本に、四本が八本に…という具合にどんどん麺の本数が増えていく。

麺が増える様が見ていて面白い

茹で上がった麺は熱々のスープの中に入れられ、そこに茹でた大根と薄切りの牛肉、香菜がかけられ、好みの辛さの辣油を入れると完成である。

一番太い大寛麺

さて蘭州の牛肉麺はというとどこよりも美味しかった。麺は小麦の甘みがしっかり出ており、麺の一本一本がゼリーに包まれているかようなつるりとした喉越し。そこに出汁の効いたスープの塩味とピリッとした辣油の辛さが加わり、後から鼻に抜ける香菜の香り。一杯の拉麺でも本場はかくも違うものかと感動したのであった。

(茂木美保子@上海)