風薫る5月、半世紀ぶりの改修工事を経て再始動した泉屋博古館を訪れ、住友家が収集してきた美術品、特に中国・殷周時代の青銅器の数々に圧倒されました。それらは単なる器物ではなく、時を超えて語りかけて来る存在感を持ち、古代中華文明の精神性や芸術性を如実に伝えてくれました。青銅器に見られる「キメラ」的な造形や「二面性」のある文様には、古代人の豊かな想像力と、現実と幻想を去来する感性が表れており、その造形美に息を呑みました。

また、今回の展示では、個人的に好きな明清時代の書画家である徐渭や八大山人の作品にも出会うことが出来、思わぬ喜びを得ました。そして、何より心に残ったのは、これらの中国文化財が日本において丁寧に保存され、真摯な研究対象になっているという事実です。文化や国境を越えて守られている人類の遺産を見る事で、私たちの歴史は過去に留まらず、今を創り、未来を照らすものだと改めて実感しました。

殷後期・前11世紀

春秋時代前期
泉屋博古館の新たな出発にふさわしい充実した展覧会を見学出来た事は、まさに「不虚此行(行って良かった)」と実感出来る貴重な体験でした。
(京都府日中友好協会会員 趙端)