世界をリードする中国の宇宙開発の今

2021年1月1日号 /

中国は現在、世界でもっとも月探査を推進している国の一つで、昨年11月24日には月探査機「嫦娥5号」の打ち上げに成功したのも記憶に新しい。中国の月面探査計画は、「繞・落・回」の3つの段階で計画されている。第1段階の「繞」は月を周回して探査すること、第2段階の「落」は、月面への軟着陸と自動探査。第3段階の「回」はサンプルリターンである。今回は、月探査の現在や今後の計画・目的について、中国の宇宙開発を推進している中国国家航天局に取材を行った。

(取材・文 村沢 譲)

 

「嫦娥1~5号」による画期的な月探査号

 

中国初の月面探査ミッションは、2007年10月24日、四川省の西昌衛星発射センターから打ち上げられた嫦娥1号です。嫦娥1号は月を周回して探査を行い、中国初となる全月球画像を撮影しました。

2010年10月1日には嫦娥2号を打ち上げ、月面の「虹の入り江」地域の一部の画像を撮影しました。さらに月探査終了後、月を周回する軌道を離れて「太陽-地球ラグランジュ点(L2)」(太陽と地球の引力が釣り合う地点)に到達。その後、小惑星トータティスに接近して探査を行いました。

嫦娥2号の打ち上げの瞬間

2013年12月2日に打ち上げられた嫦娥3号は、月面への正確な軟着陸に成功。着陸機は現在も稼働中で、月面での最長稼働時間記録を更新しています。

嫦娥3号の着陸船とローバー

嫦娥4号は月面ローバー「玉兎2号」を搭載し、2018年12月8日に打ち上げられ、2019年1月3日、世界で初めて月の裏側への軟着陸に成功しました。月の裏側の環境や地形が明確ではなかったため、着陸と探査機の保全に大きなリスクがありました。

しかし2020年10月11日現在、嫦娥4号の着陸機とローバーは、月の裏側で647日間、安全に稼働中で、数多くの科学探査データを取得しています。

嫦娥4号の着陸船が撮影した月面ローバー「玉兎2号」

嫦娥5号は2020年11月24日に打ち上げに成功、月面の物質を持ち帰るサンプルリターンを中国で初めて成功させました。

嫦娥5号打ち上げ

どんな科学的発見がありましたか?

中国の月面探査プロジェクトは、これまで数多くの核心技術を進展させ、独自の科学的成果を上げてきました。主な成果には、次のようなものがあります。

①月の裏側の探査範囲の様子や鉱物の成分

着陸エリアの地形、物質・鉱物の成分や出処、特性などの科学的結論を導き出しました。月面を直接探査することで、月の深部の物質成分を明らかにし、月の裏側、特に隕石が衝突してできた巨大クレーター・南極エイトケン盆地の複雑な衝突の歴史を解明。月の土壌の形成や変化のカギとなる証拠を発見しました。これらは今後の探査機の月の南極への着陸とローバー探査の候補地選択などに重要な参考材料となります。

②月の裏側の探査範囲の地下浅層構造の解明

嫦娥4号で着陸エリアの地層断面や小天体の衝突による飛散物質の蓄積に関する研究を行い、南極エイトケン盆地には複数回の小天体の衝突で飛散物が降り積もり、玄武岩マグマが噴き出してクレーターを満たしたことを明らかにしました。

この発見で初めて月の裏側の地下構造の謎が解明され、月の隕石衝突や火山活動の歴史に関する理解を大幅に深め、月裏側の地質の変化の研究に新たな啓発をもたらしました。他に月面の中性子や放射線量・中性原子の研究、低周波電波天文観測でも大きな成果を上げています。

これからの月探査計画を教えてください。

中国は今回の嫦娥5号ミッションを含め、月のサンプルリターンを展開する予定です。その後も月探査プロジェクト4期を計画しており、2030年前後に嫦娥7号、嫦娥8号などのミッションを予定しています。

現段階では主に無人探査を進め、技術の確立と月へのより深い認識のもと、ロボットと有人を組み合わせた形での月面探査を検討しています。今後も中国は開放的な姿勢で各国と共同して月面探査活動を展開していきます。

月面探査の最終的な目的はなんですか?

中国は現在、国際月科学研究ステーション事業を論証中です。月面に短期の有人、長期の無人インフラを建設し、国際宇宙事業に協力チャネルを設け、共同で月面探査や資源の現地における開発利用を展開し、科学成果を共有する予定です。

中日両国は互いに隣国であり、ともに宇宙大国です。双方が交流を深め、月や宇宙探査分野における協力の将来性を発掘し、ともに宇宙、工業及び科学教育の分野における協力を推進していきたいと考えています。