「スターバックス」(“星巴克”)の意味

2020年11月1日号 /

外来語の受け入れ、消化と発展

知人が中国中央テレビ2の「職場健康課(講義)」の番組に特別ゲストとして出場し、鬱病対策法について、ある医師から、家庭や職場、コミュニティなどを「鬱病患者の生命延長のスターバックス(〝星巴克〟)にすべきだ」という話があった。言葉に敏感な知人は、「スターバックス」の新しい使い方に感心したという。

現代、外来語、舶来品が欠かせないものである。中国では20世紀の初めごろには、まだ「民主」や「科学」を、〝德莫克拉西(デモクラシー)〟(略〝德先生〟)、〝赛因斯(サイエンス)〟(略〝赛先生〟)と外来語の発音を漢字で表してそのまま使っていた。

のちに日本語からの「民主」、「科学」を取り入れて、現代にいたる。中国における、外国からの新しい事物や概念を取り入れる際のプロセスの1つのパターンである。

しかし、「民主」や「科学」は、今や誰もその概念やそれによって反映される事実を否定することはないだろうと思うが、新しい概念や事物を受け入れることに往々にして抵抗があった。最初の段階では、多くの反対にぶつかり、それを提唱、実践する先賢達の努力がなければ現在の中国社会もなかったかもしれない。

中国語での「バー」

外来語の受け入れと消化の最も典型的な例は「バー」であろう。「バー」は中国語表記では、漢字1字〝吧〟で表すが、店のことは一般に〝酒吧〟という。

改革開放前の20世紀80年代までは、一般の中国人には、香港や外国映画などで見る、ブルジョアジーたちが通う退廃的な場所という知識しかなかった。改革開放政策によって、「バー」はホテルなどにも設けられるようになり、その後、町にも登場するようになった。

しかし、〝吧〟は、「酒を楽しむ場」にとどまらず、多くの人が集まって何かをたしなむ場所を表すようになる。酒を飲む場所は〝酒吧〟をはじめ、お茶を楽しむ〝茶吧〟、将棋などを楽しむ〝棋吧〟もあり、日本語の「ネットカフェ」に当たる中国語は〝网吧〟。

中国の検索最大手「百度」では、多くのユーザーが利用できる〝贴吧〟(〝贴〟は、貼り付ける、意見交換できるの意)があるほどである。

 「スターバックス」(〝星巴克〟)はもともとただコーヒーを楽しむ場の意である。それが、人々の憩いの場となり、心の憩いの場所を意味するようになってきた。

新しい事物が新しい文化をもたらす現象として受け止めたい。

※外来語が中国語訳される際、音で表現したり(例:「葡萄」)、意訳したり、一部が音で一部が意であったり(例:「トラクター」(中国語では〝拖拉机〟——〝拖拉〟が「トラ(クター)」の発音)する。〝星巴克〟の〝星〟は「スター」の意訳、〝巴克〟は「バックス」の音である。

(しょく・さんぎ 東洋大学元教授)