生の物、冷たい物

2022年8月1日号 /

日中食習慣の一つ

この連載にあった「水」に関するエッセー(2014年8月・9月号)を学生に読ませ感想を書いてもらったら色々な反応がでて、生の物と冷たい物の話が盛り上がり議論は非常に盛んだった。

「生水」は飲まないというのは、田舎では薬を飲むときぐらいで、自分が小さい時などは公害も無く、井戸水をそのまま飲んでいた。

料理となると、魚や肉類には必ず火を通すが、野菜類はキュウリやトマトは勿論、キャベツ、白菜も生のままでも食べるし、ズッキーニやナスまで千切りにし、塩、醤油、酢などの調味料で和えればおいしく食べられた。初めて日本に留学に来た時、日本の友人から生野菜は食べないだろうとよく質問されたが、田舎ではそういうことはなかった。生野菜を食べないという話は、かつて川水を使うので奇麗に洗えなかったことからくる中国南方の食習慣かと思われる。

おにぎりに当たった?

それでも一般の食事はやはり温かいものと決めていた。最初の日本での生活では、お味噌汁やトンカツなど火を通した日本料理は口にするが、おにぎりなどは食べなかった。そしてなんとおにぎりに当たったと思える事件が発生したのである。

それは、1979年の夏休みのことだった。日中友好協会東京都文京区支部長だった大家さんに連れられ、宮城県を皮切りに東北各県の青年たちと交流をして帰京した翌日、神奈川県真鶴で日中青年交歓会が催された。日本人、留学生が大勢集まり、自分は初めて海で泳いだ。昼食はバーベキューで、おにぎりが渡された。ちょっと嫌だったが、辞退しては極まりが悪いと思って食べた。しかし二つ目でもう気持ちが悪く、トイレへ行って吐いてしまった。そして東京に帰った夜から高熱が出て、2日間寝込んだ。大家さんの至れり尽くせりの世話で大事には至らなかったが、それ以降かなりの間おにぎりを見ただけで吐き気が催されるほどだった。

冷たいものと言えば、ある留学生の話は面白かった。彼女が日本人の友達と逢っていた時、そのお友達は生理中だった。しかしアイスクリームを食べている。そこで「お腹は痛くないですか」と聞いたら、なぜ痛くならなければならないの、と逆に聞かれ、誰も相手を説得できなかったという。

おにぎりに当たったという話だが、よくよく考えれば、それはおにぎりとは関係がなく東北一周などの疲れがたまっていたせいだったろう。

暑い夏は冷たいものがおいしいし、寒い冬なら温かいものが欲しがられる。固定観念ではなく、体に合ったものを摂取していきたい。

(しょく・さんぎ 東洋大学元教授)