柑橘類の「不知火」

2019年7月1日号 /

漢方でいう“去火”は「のぼせを下げる」

春休みに久しぶりに北京の親戚の家を訪ねた時、柑橘類の「不知火(しらぬい)」が出された。北京でも不知火が食べられるとは思いもよらなかった。「これはおいしいね」と言うと、子供にたくさん食べさせていると言う。「なぜ子供に?」と聞くと、それは「不知火」という名前だからと言う。

漢方では、便秘や鼻腔・口腔粘膜、結膜などの炎症を“上火”という。日本語の「のぼせる」にあたるが、“上火”の字面の意味は「火が上る」で「火が上ってくる」のだから、漢方ではその“火”を消さなければならない。これを“去火”「のぼせを下げる」というが、「火」を消すために、食材を使う食療法や薬を使う薬剤療法といろいろある。田舎では主に食療法を取っていて、冬は大体白菜や大根、暑い季節はキュウリが何よりである。白菜や大根は生でも食べられるし、じっくり煮込んだスープも非常に良い。キュウリは日本ではほとんど生で食べるようだが、中国では生でも炒め物やスープにしてもいい。

 

熱中症に「緑豆湯」

野菜も含めて、食糧の中でよく用いられているのは緑豆である。幼い頃、夏の朝食には必ず緑豆と粟を煮込んだ緑豆粟の粥を食べた。学校や仕事から帰ると、必ず大きな盥(たらい)いっぱいに緑豆をぶつぶつ煮こんだ「緑豆湯」が置いてあった。冷蔵庫のない時代は、より冷やすために桶に入れて井戸の中に吊るすこともあった。暑い夏の野良仕事の後、ほどよく冷やした「緑豆湯」は何よりのご馳走であった。まだ人民公社、生産隊の時代、小麦の刈り入れなどの時節には、臨時に手配された調理人が「緑豆湯」を作って労働現場まで届けてくれることもあった。日本で麦茶を飲むように熱中症対策であった。

5月は熱中症で緊急搬送された方が多かったようだ。梅雨が明けると気温が急上昇し、熱中症の危険性がぐっと上がる。水分を多くとれとか、よく休めとか言われるが、日本のネット上では食生活を通じた熱中症対策はあまり見ないようである。一年を通して食療法を活かした健康な体作りが必要である。

親戚が子供に「不知火」を食べさせたのは、「不知火」の意味が「火を知らない」つまり、“去火”できるからだという。地名を品種名に取った「不知火」だから、のぼせやすい子供にとっていいのかどうか分からないが、普段から果物や野菜類をたくさん食べて、健康な体を作ることは子供も大人も大事である。

(しょく・さんぎ 東洋大学教授)