今月は、以前から関心を持っていた中国の音楽芸術シーンについて、実際に留学生活の中で体感した「現代の流行と傾向」を紹介します。
〇伝統文化(特に古代詩)を取り入れた創作の盛り上がり
中国の音楽分野では、伝統文化、とりわけ古代の詩を現代に蘇らせる創作活動が非常に活発であることに気づきました。過去の遺産をただ保存するのではなく、再解釈して現代の音楽と融合することで、生きた芸術として発信しようとする動きが見られます。ここでは、今月私が実際に見て、聴いて体験した3つの事例を紹介します。
(1)唐代古谱诗词音乐会
唐代古谱诗词とは唐代の楽譜が付された唐詩のことで、詩・楽・歌が一体となった文化遺産を指します。今月、学校のホールでこの唐代古谱诗词を再解釈し、モダンな伴奏を配して復元する音楽会が行われました。この演目を通して、博物館のような場所で歴史資料として文献を眺めるのではなく、作品を現代に「音」として蘇らせ、実際に響きを体感することができました。これにより、当時の人々が唐詩をどのように歌っていたのかをより具体的に想像することができ、理解が一層深まりました。

唐代古谱は日本で発見されたものも多いようです。
(2)上海民族楽団〈诗的中国〉コンサート
上海では10月から11月にかけて第24回中国上海国際芸術祭が開催されており、その中の一つの公演である上海民族楽団の演奏会を鑑賞しました。テーマは〈诗的中国〉で、現存作曲家が古代の詩のイメージをもとに創作した楽曲が演奏されました。二胡、琵琶、太鼓などの伝統楽器を含むオーケストラ編成で、舞台後方には詩文が投影され、音楽と視覚演出が密接に結びついていました。形式はクラシック音楽の演奏会のようでしたが、楽器編成や舞台演出は独自のもので、中国の詩の世界観に浸りながら鑑賞できる舞台芸術となっており、非常に印象的でした。

初めて音色を聴いた伝統楽器も多く、貴重な体験となりました。
(3)上海師範大学・音楽学部教授による講座
先月学内の音楽イベントに参加した際、指導教員を務めてくださった音楽学部の教授と知り合う機会がありました。教授も伝統的な要素を取り入れた音楽創作に取り組む音楽家の一人であり、今月ちょうどその教授の講座があったので聴講してきました。「伝統的な要素、特に詩をどのように音楽創作に取り入れるか」という内容の講座で、古代中国語の発音や声調、各地の方言を活用した作曲法、西洋音楽の技法を応用した手法など様々なアプローチが紹介され、教授自身がこれらの手法を用いて作曲した作品を実際に聴きながら、その創作のプロセスについても学ぶことができました。
これらの体験を通し、音楽と伝統文化との融合が中国では積極的に議論・実践されていることを強く感じました。このような試みは作品そのものが魅力的であるだけでなく、現代の人々が伝統文化に触れ、理解し、興味を持つきっかけにもなっています。
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最後に、今月の成果と来月の目標をまとめて終わりたいと思います。
◆博物館解説員研修
今月から始まった学内博物館の解説員研修では、当初は長い中国語の解説文を覚えることが困難で、他の中国人学生についていけずに苦労していました。しかし先生の助言で、「もとの解説文は全て暗記するのではなく参考として、作品を自分の目で見て理解し、自分の言葉で話す」という方法に切り替えたことで、より自然に説明できるようになりました。結果として文物への理解も深まり、研修がより実りあるものとなっています。また、博物館の受付当番の仕事を通じて中国人学生と交流を深めることができたのも大きな収穫でした。

◆中間テスト
わずかに9割に届かなかった科目もあり目標達成とはなりませんでしたが、試験を通じて弱点を把握することができました。間違えた部分はしっかりと復習して、期末試験ではより良い結果を目指して学習を継続していきたいと思います。
◆来月の目標
留学生活に慣れ、落ち着いてきたタイミングでもあるため、来月は自分の将来についてじっくり考える時間を確保したいと思います。また、今月はテスト勉強もあり寮で過ごす時間が多かったため、来月はもう少し積極的に学校外に出て、現地の生活を体感する時間を増やしたいです。






