様々な出来事を経験した留学生活が気がつけば終わりを迎え、日本に帰国していた。実家に帰るため、北京から上海で乗り継ぎ1日かけて帰国した。空港に降り立った瞬間の飛行機の衝撃と同時に、私の留学生活は終わったのだと強く実感させられた。
1年前の9月1日、私は一人で北京へ向かった。一緒に行く仲間はいない。憧れであり夢の中だけの存在だった清華大学は、今まで自分とはかけ離れた世界だった。まさか自分がそこへ留学に行くとは思いもしなかった。この度の留学で得たものの価値は計り知れない。
ここでは本当に多くの優秀な学生に出会った。6万人規模の学生と1万5千人ほどの教職員が在籍し、厳しい面接や「高考」という毎年1千万人を越える受験生の中から選ばれた人々が集う清華大学で、中国人学生と関わることができ嬉しく思う。図書館の席の埋まりを見ても分かるように、彼らはテスト期間関係なくずっと勉強している。私の友人たちは、膨大な課題に加え、学内のイベントやスポーツにも積極的に参加しており、体力、忍耐力の差をひしひしと感じた。寝ているのか心配になるほどだ。中国人に優秀な人が多いのは、圧倒的な努力量が理由の一つだと考える。努力を惜しまず、何事にも全力で行う姿に感銘を受けた。あまりに自分との能力の差が大きく、時には嘲笑されることもあった。しかし、多くの学生は寛容な態度で私を受け入れ、拙い中国語で懸命に話す私の言葉にも、最後まで耳を傾けてくれた。そのような姿勢に対して、今もなお深く感謝している。当時は、悔しさを糧に学習に励むことができたため、今ではその経験すらも貴重であったと感じている。
私がここまで充実した留学生活を送ることができたのは、同じ留学生の仲間たちの存在が大きかった。初回授業で話しかけてくれた数人のクラスメイトとはその後、勉強も食事もずっと共にする大好きな友人になった。彼らのおかげで、北京に来た当初感じていた不安はすぐに消え、中国語を話す機会に恵まれ、言語力向上につながった。大学生活にも慣れ、今学期は一人で勉強したり外出したりするほど行動力が上がり、1年間の授業の出席率は100%と充実した日々を過ごした。
国籍や年齢、そして私が経験したことのない様々な背景を持つ彼らに強く関心を抱き、深く関わることができたのは、私にとって非常に意義あるものだった。不思議なことに、帰国の1ヶ月前になってから知り合った友人も多く、こんなに素晴らしい人たちともっと早く出会えていたらどんなに良かっただろうかと考えると、残念さと共に、悔しさにも似た行き場のない感情で胸がいっぱいになった。
日中交流以外にも多くの活動に参加した。大学内で募集していた「青枫」植樹活動は、テスト直前の勉強時間の合間に参加した。私は高校生の頃から環境に対して関心が強く、SDGs13番の「気候変動に具体的な対策を」に焦点を当てて、学校のレポートや発表のテーマにも取り上げるなど、主体的に学びを深めてきたからだ。
また、救急訓練と心肺蘇生圧迫練習機の実演講習に参加し、救急技能証明書を取得した。AEDも使用して北京市赤十字会の方から直接指導を受けることができた。日本でも一度講習を受講した経験があり、今回は資格取得を目指した。講習と試験を受けた後、専用キットを用いて自室で練習を重ねた。
これはスマホと連動して、CPR(心肺蘇生法)の胸骨圧迫における圧の強さとリズムの基準を測ることができる。清華大学紅十字会学生支部と上海の会社が提携し、講習の参加者に、心肺蘇生胸骨圧迫練習機を1週間使用できる機会を提供している。
1年間を通してボランティア活動に参加し続けた結果、「清華大学一星级紫荆志愿者证」を獲得することができた。2024年で留学生が獲得したのはこれが唯一である。このことは私にとって大きな誇りであり、応援してくださった方々に感謝すべき出来事である。
言語を学ぶことは単なる知識習得にとどまらず、自身の感性を磨き、視野を広げることにつながる。中国語学習を通じて、言語力向上だけでなく、相手の感情に寄り添う力も高まった。前学期は言語力向上を実感できず、悩むこともあったが、ある時すれ違う人の会話が聞き取れたことで初めて自分の成長を感じ、喜びと安堵の気持ちに包まれた。留学前には、留学経験者は誰もが流暢になって帰って来れるという誤った認識があったが、そのレベルに達するには相当な練習量と時間が必要であることを痛感した。私は言葉を適切に使いこなせる能力が足りていない。現在は帰国しており、現地のような言語環境にはないが、その中でも語学力を維持・向上させるために、友人と継続して中国語で連絡を取り合い、日々の出来事や日本文化を紹介している。加えて、中国語の映像や学習アプリでネイティブの自然な発音や表現に触れることで、学習を継続している。
これらを通じて、実際に言葉を使う機会を意識的に作り出し、留学で得た基礎をさらに発展させていきたいと考えている。
留学前に準備した学習計画書に留学後の計画及び進路を記載していた。それは、様々な公益活動に参加して社会貢献に努めることと深い学びや体験の意義を伝えることである。これらの目標を達成するため、8月に行われる外務省後援の研修に参加するなど、今後も多数の交流活動に参加予定だ。
学期終わりに雲南省を訪れた際に空港にて大学の校訓と同じ「厚德载物」が書かれた絵を見つけ、ご縁を感じるとともに、自分が学んできた理念が旅先でも息づいていることに驚きと感動を覚え、この校訓は共通しているのだと感じた。
これは今まで参加してきたボランティア活動やイベントでいただいた物の一部で、
最後に参加したボランティア活動は卒業マラソンのスタッフだった。
帰りの機内から見た景色は息を呑むほど美しく、1年ぶりに帰国できる喜びとお世話になった大学や仲間たちと離れる悲しさが同時に込み上げてきてとても複雑な心境だった。
この度の留学において支えてくださった皆様に心から感謝している。
日中友好協会及び各関係者の方々、清華大学での留学中ご支援いただいた尊敬する李宸先生、ボランティア担当の刘至真先生、授業を担当してくださった戴先生、侯先生、朱先生、23号宿舎の王先生をはじめとする先生方、20号、19号の先生方、お世話になった宅配便受付の李さん、そして留学中に出会った私の大好きな友人たち
この方々のおかげで、1年間自分を信じて前向きに努力することができた。清華大学の校訓である「自强不息、厚德载物」の精神に恥じぬよう、今後も絶え間ない努力を続け、社会に貢献できるグローバル人材を目指したい。