「中国留学を終えて ~これからの自分~」石橋 肇子(北京師範大学)

6月下旬に最後の定期考査を終え、日本に帰国しました。初めての海外での長期生活は、住んでみて初めて気付くことの連続で、発見や刺激に溢れた、とても有意義な留学生活となりました。

 

私の留学生活を語る上で欠かせないのが中国各地を旅した経験で、実際に足を運ぶことで得られる価値のある学びが多くありました。今後留学に行く方も、ぜひ様々な場所を訪れてみてほしいと思います。私はこの10か月で、小旅行も含めて30都市以上を訪れました。中国は本当に広大で、都市ごとに食文化や言語、気候なども大きく異なります。また、北京で留学している私にとって中国の地方都市の様子を見ることができたのもとても貴重な経験になりました。時間に余裕のある方には、火车で移動するのもおすすめです。普段接することのない世代やバックグラウンドの人との出会いがあり、特に外国人として乗車していると多くの人が話しかけてくれて交流できることも多いです。

 

ここでは、私が訪れた中でも特に印象的だった都市を2つ紹介します。

 

1つ目は广西の钦州と桂林です。ここは端午节にあったドラゴンボートの招待レースに参加するために行きました。特に钦州は、観光目的だけだと中々外国人が行く機会はないと思いますが、だからこそ中国の地方らしい雰囲気を肌で感じることができました。广西は壮族という少数民族の自治区で、実際に多くの壮族の方に出会う機会がありました。广西のすぐ北にある贵州にも行ったことがあるのですが、ここでも苗族や侗族といった様々な少数民族の方と出会う機会がありました。广西で特に印象的だったのは、至る所に犬や猫、兎の肉を食用で扱っている飲食店があったことです。これらの動物を食用することは国際的に様々な意見があると思いますが、私は個人的にその地域の伝統や習慣として尊重されるべきなのではないかと思いました。東西南北、様々な都市を旅しましたが、ここまで多くのお店を見かけたのは広西省のみで、改めて中国の大きさと文化の多様性を感じました。

 

钦州で見た飲食店のメニュー

 

2つ目は珲春にある中国、北朝鮮、ロシアの三国国境です。留学前の私は北朝鮮は対して「謎に包まれた、近いようで遠い国」というイメージを持っていましたが、中国に来てから解像度が上がったように思います。中国の大学には北朝鮮の留学生もいますし、小红书には中国人留学生が北朝鮮留学を記録した動画も見ることができます。また、北京には北朝鮮国営のレストランもありますし、国境地帯に行けば出稼ぎに来ている北朝鮮人もいます。私が行った国境地帯からは北朝鮮の小学校や軍人、農作業をする人、そして、テレビでよく見るあの肖像画も見ることができました。もちろん、これらがどれほど北朝鮮の実情を反映しているのかは分かりませんが、それでも、日本にいる時はあれほど遠い存在だった国が、中国にいるとぐっと身近になることが面白いなと思いました。

 

肖像画です。私は双眼鏡を持参しましたが、タクシーの運転手さんがよりはっきり見える双眼鏡を無料で貸してくれました。

 

他にも様々都市に足を運び、それぞれの都市で見たもの触れたものが私の見聞を広げてくれました。中国全体を見たというにはまだまだなので、今後も更に多くの都市を訪れ、より深く中国を理解したいと思います。

天津に行った時の列車、内モンゴル行きでモンゴル語の表記がありました。

 

新疆だと中国語とウイグル語の併記です。

 

敦煌の砂漠で見た日の出、忘れられない絶景です。

 

この留学生活を通じて、旅も大学生活も、中国に住んでみて初めて知ることばかりでした。それは生活様式や文化、価値観だけでなく、今の中国人、中国の学生が何を感じ、何を考えながら生きているかなども含めてです。留学前は、大学の授業や本、ネットを通じて中国について色々と学んでいたつもりでしたが、実際に現地で生活し、多くの人と出会い、見て、聞いて、感じたことで、より深く、そして広い視点で中国を見ることができるようになりました。同時に、広大、かつ、変化の速い中国を理解するにはまだまだ知識も経験も足りず、これからも学び続けていく必要があるのだと再確認することができました。

 

私は将来も何かしらの形で中国と関わっていきたいと思っています。この留学生活で得た経験を活かして、日中友好や両国の更なる発展に貢献していきたいと思います。

 

最後になりますが、このたびは奨学金生としてご支援いただき、心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。