「中国留学 ~前期を終えて~ 」 里和 麟太郎(浙江大学)

 昨年9月に始まった留学生活もはや半年になろうとしている。初めは手続きなどで慌ただしくしていた上に外国での生活に四苦八苦する毎日であったが、今は大分適応できたように思う。前期中は中国語の勉強をはじめ、専門とする宋代史の授業に参加して学びを得ることができた。現地の中国人とも関わりを持つことができ、おおむね順調な留学生活が送れていると思う。

 前期中はまず、中国での生活や環境への適応を念頭に生活を送った。その上で中国語の習得と専門的な知識のアップデートを目的として大学の授業へ参加しながら、自身の研究活動を行なった。中国語については、浙江大学が開講している外国人留学生向けの授業に参加する他、現地で知り合った中国人に教えてもらっている。そして生活の中で使用することで力をつけようとしている。留学開始以降、中国語を聞く力及び話す力は伸びている実感がある。とはいえ、専門的な話を理解するとなると未だに力が足りないと考えている。留学終了時にはしっかりと理解できるようなることを目的として、今後の留学生活の中で更に精進していきたいと思っている。研究活動についても、留学開始前より行なってきた研究を留学生活の中で継続している。その他、留学にあたり計画していた調査についても少しずつ進めている。今後も継続していきたい。

9月に行なわれた留学生向けの開学式典。

大学の教室。日本の大学と大きい違いはない。

 

 学習や研究に関する事柄は以上のとおりである。他にも前述の通り、中国語を教えてもらうなどの形で現地の中国人との交流といった留学ならではの経験ができた。特に、中国の学会に参加できたことは良い経験となった。その場にて広げられた交流もさることながら、中国語を使った発表をできたことは中国語の学習や今後の研究生活にとって有益な経験となった。また、杭州の街を見て回る機会が得られたことも良い経験となった。筆者が研究している南宋期の遺跡や、都であった当時の名残などは見ていてとても興味深いものである。杭州という街に住み、見て回る中で特に興味深かったことは「水」が豊富であるということだ。杭州の周辺は西湖の他に銭塘江という大きな河が流れ、更には歴史上にも名高い京杭大運河の南端にあたる。市内にはこの大運河の支流としてかつて利用されていた運河が今も流れている。水運に恵まれたこの土地柄が南宋の都が置かれた一因となった訳だが、杭州は水運に恵まれた土地であったことが実感できた。このような「実感」は実際に現地に赴いて目にしなければ得られないものである。このあとの留学生活においても、できるだけ多くの「実感」を得ることを大切にしたいと考えている。

北京から杭州までを繋ぐ京杭大運河。

浙江大学紫金港校区の周囲を流れている余杭塘河。京杭大運河に繋がる。

 

 現状において一定の成果を得ていると思われるが、いくつか反省点もある。まず、留学前の事前準備が不足していた点は否めない。中国語の勉強や事前の情報収集といった準備は重要であるが、不十分であった。もう少しだけしっかりとした準備をしておけば、留学開始時に慌てずに済み、よりよい学習及び研究活動ができたと思われる。また、留学生活の中では、もう少し積極的に行動すべきであったと思う。人と関わることや、街を見て回ることなど、この機会しか経験できないことがたくさんある。無論前期の中でもできる限りのことはしてきたつもりではあるが、筆者は生来積極性に欠けるところがあり、折角の留学の機会にあたって行動に二の足を踏むことがあった。人間的な修行という意味でも、今後はより積極性をもって行動していきたいと思っている。留学生活の中では、専門的な内容や中国語の学習だけではない学びが得られる。今後も多くの経験や学びを得られるように行動していきたい。