今月は中旬ごろから雨の日が多くなった。中国もこの季節は梅雨なのだなと感心させられる。上旬には大学の授業は終了し、卒業式なども行なわれている。年度が4月に始まる日本人にとっては馴染みのないことだが、中国の大学生にとってはこの季節が卒業シーズンと言えよう。
今月のレポートのテーマは暮らしている街の特徴についてである。筆者が暮らしているのは杭州である。この都市は中国でも「古都」として知られ、五代十国時代の呉越や南宋が都を置いたことで有名である。この地は西湖を中心とした湖山の景勝が美しい風光明媚な地として知られており、士大夫達にとってこの地の地方官として赴任することは自慢できることであったという。南宋の専権宰相賈似道は西湖を見下ろせる葛嶺に邸宅を構えており、清代には孤山に離宮が置かれるなど、時の権力者達もこの景勝を好んでいたことがわかる。現在でも西湖の湖岸には多くの観光客がいる。筆者も初めて見た時は感動を覚えた程の美しい景色である。

ここには清の行宮の遺跡がある
西湖湖岸と銭塘江の間に挟まれたエリアにかつての都城があり、往時を偲ばせる遺跡が点在する。個人的には南宋時代の専権宰相秦檜の邸宅として造られ、後に宮殿としても使用された徳寿宮の遺跡を見ることができる徳寿宮遺址博物館、南宋時代の道路や住居の遺跡を見ることができる南宋遺址陳列館がおすすめである。歴史の長い都市である杭州には博物館も沢山存在している。多くの文物を所蔵する浙江省博物館や杭州博物館、京杭大運河についての展示している大運河博物館などは杭州の歴史を学ぶことができる良い博物館である。

御街沿いにあり、付近にはかつて太廟跡などの南宋の史跡がある

一部の建物は再現されており、合わせて遺跡の展示がされている
見学者が多い人気の博物館である
杭州は上海や南京、蘇州といった都市と高鉄で結ばれており、いずれも二時間以内でアクセスが可能である。また隣街が紹興酒で有名な紹興があり、杭州と地下鉄で繋がっている。いずれも観光地として有名である上、江南のイメージにぴったりな風景を見ることができる。このように、複数の観光地へのアクセスも容易である。留学先としても、旅行先としても良い場所と言えるだろう。

杭州は杭州東駅、西駅など複数の駅から高鉄が発着している