上海は、一言で表すと「矛盾と魅力が共存する都市」だ。外灘に立てば、黄浦江の向こうに林立する超高層ビル群が未来都市のように輝き、背後には1920年代の欧風建築が並ぶ。この新旧の景観が、上海のアイデンティティそのものである。
暮らしてみてまず感じたのは、交通網の発達ぶりだ。地下鉄は延伸を続け、現在では20以上の路線が市内外を縦横無尽に走っている。アプリで路線を確認すれば、ほとんどの目的地に1時間以内で到達できる。車両も清潔で冷房が効いており、乗客はスマホを手に静かに過ごしている姿が多い。これは日本の通勤電車に近い光景だ。
一方、街の食文化は圧倒的に多様だ。朝は小籠包や油条、昼は上海料理、夜は四川や湖南の辛い料理、さらに韓国料理や日本料理まで揃う。私は授業後によく屋台で生煎(焼き小籠包)を買って帰るが、その香ばしい匂いと肉汁の熱さは、もはや日常の楽しみの一部になっている。
上海の人々は一般的に行動が速く、話すテンポも早い。レストランでは注文から料理が出てくるまでが驚くほど短い。道を歩いていると、誰かが電話で早口で話していたり、配達員がバイクで次々と荷物を運んでいたりと、都市全体が高い回転数で動いているようだ。日本の都市が「きっちり計画的」に動くとすれば、上海は「柔軟かつスピーディ」に対応していく印象だ。
また、上海は中国の中でも特に国際化が進んでいる。街中の看板には英語併記が多く、外国人向けのサービスも充実している。私の住む国際寮では、日常的に英語と中国語が飛び交い、週末には各国の学生が料理を持ち寄って交流している。
しかし、こうした華やかな面の一方で、下町や古い住宅地に足を踏み入れると、洗濯物が路地いっぱいに干され、子どもたちが裸足で走り回っているような風景もある。そこには、超高層ビルの影に隠れた庶民の生活が息づいている。この振れ幅の大きさこそが、上海という都市の奥深さを物語っている。

外灘

武康路(旧フランス租界)