「自强不息、厚德载物」中溝 明佳(清華大学)

私の留学している清華大学は言葉があっても語りきれないほど魅力に溢れている。紫色を学校のカラーとし、学内の至る所が紫色で溢れている。清華大学が紫色を採用する背景には、中国における紫色の歴史的な重要性がある。中国において、紫色は古来より高貴さや神秘性、権威を象徴する色とされている。このため、清華大学がこの色を学校カラーとして選んだことは、大学が持つ伝統や学問的な権威を強調する意味が込められていると考える。また、日本でも聖徳太子の時代の冠位十二階において紫色が最高位の色と定められていた。日本の古典文学で有名な『源氏物語』では紫色は貴族社会の象徴として登場し、優雅さや高責さを表現している。「紫=ゆかり」と読むことから、紫色は人との縁や深い結びつきの象徴とされており、この象徴的な意味合いは中国と日本の文化を通じて共通している。

国旗掲揚が行われた際の写真
大学内のバスも紫色

初めてこの大学に足を踏み入れた時の感動は忘れられない。1911年創立の歴史ある総合大学で、キャンパスの面積は約482ヘクタールとまるで一つの街のようだ。大学内には様々な設備が整っており、大学生活を充実させる環境が整っている。7つの図書館と23の食堂、あらゆるスポーツが開催できる巨大な体育館があり大学から出なくても困らない。学習や生活に必要なほとんどのことが大学内で完結する。そのような近代的な施設が完備されている一方、広大な敷地内には清朝時代の皇帝たちが訪れていた皇室庭園の一部が今も残っており、時代を遡って古代中国を直に感じることができる。

授業は学部を問わず、重複がなければ興味がある講義を受講可能だ。実際私も後期は法学部の授業を申し込んで何度か聴講した。学生の専門知識の幅を広げられる効果が期待できる。ここでは学習に専念できる施設も充実しており、学生が自分に合った場所で主体的に取り組める環境が整っている。私は普段図書館で勉強をしている。特に逸夫馆図書館にはテスト期間は毎日通った。昼間は天井から柔らかな光が差し込み、暗くなると緑ランプをつけて勉強する。初めて見る図書館の雰囲気とこの落ち着く環境がとても好きだった。

逸夫馆図書館

グラウンドの前では毎日のようにテントが立ち、イベントが開催されている。内容は企業によるプロモーション活動や学部・学生団体の企画など様々だ。そして著名企業のCEOや各国の大使館関係者による講演も頻繁に行われており、世界の舞台で活躍されている方々の貴重なお話が聞けるのも清華大学ならではの大きな特徴だ。

清華大学の校訓は「自强不息、厚德载物」である。これは「自ら努力を惜しまず、常に向上し続けるとともに、大きな徳を持って全てを包み支える人間になるべきだ」という意味である。私はこの意味を大学の史料館に行った際に知り、心を打たれた。この校訓はまさに私の理想とする人間像であり、努力し続け自らを高め続けようとする姿勢と、社会に貢献しようとする在り方に共感した。

清華大学資料館