「前期留学を終えて」若林真央(西安交通大学)

中国留学を開始して半年が経過しました。私の人生の中で最も激動の半年だったと感じています。初めてひとりで海外に行き、日本語が通じない環境下で、煩雑な手続きをこなし、部屋を借りひとり暮らしをして、自分のお金だけで家賃も食費も生活費も光熱費も娯楽費もやりくりして…。半年前の自分を振り返ると「よくやったな自分」と自画自賛の言葉が出てきました(笑)

さて今回は前期留学を終えて感じたこと思ったことを4つのトピックに分けて紹介します。

①留学生活

留学生活は至ってシンプルです。平日は午前中に講義を受け、昼ごはんを食堂でクラスメートと一緒に食べ、午後からは勉強したり街へ出かけに行ったり、部屋に帰って休んだり…。休日は友人出かけたりご飯を食べたり、掃除をしたり、昼まで寝る日もあったり…。というルーティンです。毎日が少しでも収穫がある日になるように意識して過ごしています。

②西安という場所

「なんで留学先を上海や北京じゃなくて西安にしたの?」と聞かれることがよくあります。私は中国の歴史や美術が好きだったので、歴史情緒溢れる西安を選びました。この選択は間違っていなかったと思います。街中には何百年の歴史がある城壁が残っており、あらゆる箇所に遺跡や寺院、博物館があり、シルクロードの経由地として西域と融合した文化が残り、空海や阿倍仲麻呂などの偉大な日本人留学生の記念碑が建てられ、少し足を伸ばせば兵馬俑がある…歴史好きにはたまらない場所です。

城壁の上。風が心地よい

高校生のときからずっと見たかった兵馬俑

しかし日本人が少ないので行政手続きや医療の面で不便を感じることが多かったです。上海や北京でなら大学の事務室に日本語が話せるスタッフがいたり、日本人向けの医療サービスを提供している病院があるのに…と考えることもありました。日本人が少ない都市に留学することはメリットもありますが、安心安全を重視するならば日本領事館がある都市に行くのが最適かなと思いました。

③語学力の成長

私の成長曲線は未だ緩やかです。 半年前と比べて喋れるようにはなったと思いつつも、半年留学していてまだこんな程度なのかと焦りも感じています。1年間留学したのに中国語がペラペラにならなかったらどうしよう…という恐怖感と戦いながら勉強をしています。この焦りにより、私より遅く中国語の勉強を始めた友人がペラペラになっているのを見て、自分と比べ劣等感を感じたり、YouTubeで「半年で中国語完全マスター!」なるタイトルの動画を見て私は数年間勉強してもマスターには程遠いのに…と、どんどん感情がメガティブになってしまいます。

しかし「簡単な日常会話ならできる」とは自信を持って言えるようになりました。6年間中国語を勉強してこの程度なのかよ!と思われるかもしれませんが、日常会話ができるレベルに達することは容易ではないことを身をもって実感しています。語彙や文法の知識が増えた分、自分が思っていることを中国語に置き換えて伝えられたり、先生の早口中国語は少しずつ聴き取れるようになりました。特に留学生同士で中国語を用いて会話ができるようになり、彼女たちの国や生活の話を知ることができて楽しいです。

おそらく今後も自分の中国語レベルを人と比べてしまい落ち込むかと思います。しかし社会人時代も含めて6年も同じ勉強を続けられているのは、人一倍中国語に愛着を持っている証拠です。人より成長のスピードは遅くても、堅実に学習を続けていくことが大切だと考えます。

④日本と中国の関係性

私が中国留学を開始した9月初旬、その1週間前に東京電力が福島の原発廃炉に伴う処理水を放出しました。これにより日中関係が最悪な状況の中で留学生活をスタートすることになり、非常に不安でした。しかしいざ渡航してみれば、嫌な言葉もかけられることもなく、大家さんも二つ返事で日本人の私に部屋を貸してくれ、心配は杞憂に終わりました。

ほかにも9月18日(満州事変の発生日)や12月13日(南京大虐殺の発生日)等、日本人が中国にいて気まずくなる日を過ごしましたが、中国人の友人や先生は普段通り私と接してくれました。過去の日本のおこないに対しては怒っている人はいても、目の前にいる日本人には親切にしてくれる人が多かったです。

先日、西安のインフラ会社に勤務する中国人とお会いする機会がありました。その方は学生時代日本に留学していました。「留学していたのはもう20年以上も前のことで、現在は日本語を使用する機会がないから日本語は忘れかけてる」とおっしゃっていましたが流暢さは健在でした。当時は1元=8円(今は1元=20円)だったから毎年70万円の国公立大学の学費を両親から仕送りしてもらうことに申し訳なく感じていた。居酒屋でアルバイトをしていた。日本から月5万円の給付型奨学金をいただいていたので、それで家賃を賄っていた…等の話を聞きました。そのあと「日本からの奨学金に留学中大変助けられた。恩を感じている」と言われ、この言葉にはハッとさせられました。外国人留学生に奨学金を支給することに批判が多い昨今ですが、日本に対して高い好感度を持った人材を世界中に有することができ、将来的に日本国が得られる利益の方が大きいのだと理解しました。この方も勤務先では上層部かつ共産党員なので、このような方に親日感情を持っていただけることは有り難い話だと思いました。私もいま中国政府奨学金をいただいて留学しているので、この恩を将来どこかで中国に還元できるようにしたいです。

以上がこの半年間で考えたことです。残り半年も充実した日々となるよう過ごしていきます。

西安の伝統的な街並み

兴庆宫公园。夜景が綺麗