「中国留学 ~前期を終えて~」井口智奈(中国伝媒大学)

これまでの留学生活の所感

早いもので留学生活も後半に突入しました。北京留学は住環境も食生活もレジャー面も言うことなく、少なくともあと1〜2年は住みたいなと思うくらいですが、残念ながら時間は有限なので残りの時間も悔いのないように過ごそうと思います。

 

生活面では全く不安も不満もなく暮らしてきた私ですが、肝心の語学力に関しては日を追うごとに漠然とした不安が増えていった前期でした。

本奨学金に応募する際、私は「中国語で難なくコミュニケーションが取れるような語学力を身につけたい」気持ちと「中国のグラフィックデザインのルーツを知りたい」気持ちのどちらを優先すべきか迷い、後者を選び広告学部の学部生として1年間留学することにしました。
しかし心のどこかでは「中国語専攻以外の授業を受けるとしても、ある程度は中国語力が身に付くだろう」「努力してどっちも習得すればいい」と思っていたのかもしれません。

 

いざ中国生活が始まってみると、ただ過ごすだけで”どちらも習得できる”ほど現実は甘くはありませんでした。特に上半期の課題提出締め切りが集中した12月は授業を受けるので精一杯で、中国語学習にまで手が伸びない日が続きました。

 

なぜ自分の中国語力が伸びないのか。ある日冷静になって考えてみたところ、中国語を使う際に“恐れ”のような感覚があることに気がつきました。
正しい声調で発声できるか、めちゃくちゃすぎる文法になっていないか、相手から質問されたら返せる言葉はあるのか……。私には中国語を発する前に一度気持ちを整えてから話しかける癖がありました。
もちろん、母国語で会話する際は準備なんてしません。中国語に対して身構えるのが続く限り、中国語を日常のものとして使いこなすことは難しいだろうと思いました。

 

この“恐れ“を無くすには、とにかく中国語を口に出すことに慣れる必要があります。

解決するには色々な方法がありますが、ひとまず私は冬休み期間から外部の語学スクールに別途通うことにしました。

スピーキングの機会を増やすといえば、中国の日本語学習者と相互学習する方法もあります。
ただ、今の私が中国語を話すことに身構えてしまう背景には「基礎がなっていないことによる自信不足」「下手すぎる中国語に相手を付き合わせている申し訳なさ」がある気がしました。なので、一旦プロの前で下手な状態を曝け出すのが今の自分に必要なことと思い、スクールを選びました。
少し逃げの姿勢かもしれませんが、勇気が出ずに何もしないよりは、少しでも行動して自信を補充する方がいいはず……!と信じて、今は改めて中国語に向き合っています。また下半期に時間割のタイミングが合えば、今いる大学の中国語授業も聴講に行けたらいいなとも画策しています。

 

他にも中国語学習の際は読み書きより声を出す練習の時間を増やしたり、留学生の友達と遊ぶ機会に恵まれたりと、冬休みの間に中国語への触れ方が少しだけ変わっていきました。
春節休みもあり、スクールの授業自体はまだそこまでの回数出席している訳ではないものの、冬休みを経て少しずつ中国語に対して身構える感覚が薄くなってきた感覚があります。この調子でゆっくりとレベルアップしていけたらと思います。

 

勇気付けられた言葉

前期の終わりに不安が解消されたきっかけが、実はもう一つありました。

それは1月下旬に旅行に出かけた際に立ち寄った、雲南民俗村という少数民族の文化を体験するテーマパークに立ち寄った時の出来事です。

 

確か佤族か布朗族のエリアの施設にお邪魔した時に、中にいた係員さんに話かけられ、少しだけお話をする機会がありました。
その日は平日で天気も悪く、お客さんの数がハイシーズンと比べて少なかったため、普段は北京で留学生をしている日本人であること、日本では会社員として働いていたこと、思っていたより語学力が伸びずに少し焦っていることなどをゆっくりと話しました。
私の言葉を受けて係員さんは「今こうして一人で初めての土地に来たことがまずすごいし、言語習得はゆっくりで大丈夫。焦らず少しずつ周りの人と会話を重ねればきっと上手くなりますよ」という趣旨のエールを送ってくれました。

 

この暖かい言葉が私にとっては大きな助けになりました。
周囲の人と比べて自分の不出来さを必要以上に気にしてしまう、学生時代の悪い癖がいつの間にか復活してしまっていることに気がつきました。

他人と比べるのではなく自分なりの進歩に目を向けるようになってからは、少しずつではあるものの聞き取れる単語が増えていたり、少しずつ会話のキャッチボールが続くようになっている自分に気づくことができました。

 

せっかく中国にいるのだから機会を無駄にしないよう、後期も語学学習を続けていきたいです。ただ、不安から努力するのではなく、自分のために楽しみながら学習を続けていこうと改めて思いました。

 

雲南民俗村の一場面。今回の旅の途中、特に雲南省の昆明ではたくさん優しい人に出会いました。