「日本と中国、似ているところ、異なっているところ」櫻井彩乃(雲南大学)

今月のテーマは日中間の相違点ですが、似ている部分よりも異なる部分に目が行きがちです。自身が感じた日中間の違いを全て述べるには数ヶ月分のレポートが必要なため、テーマを3つに絞って綴りたいと思います。(それでも長くなってしまいました。)

まず始めに、政治体制の違いがもたらす両国の差異です。中国では、日々の生活の中でも共産党による中国国民としての意識を高める取り組みがよく見られます。例えば、先日雲南大学の100周年記念式典に参加しましたが、クライマックスは習近平国家主席や「中国梦」に関する内容でした。毎週月曜日には小学校から国歌が聞こえ、道を歩けば共産党の政策や理念を記した立て看板に出会います。中国人との交流の中で政治的理念の違いから不和が生じたことはないですが、上記のように生活の中で政治体制の違いを認識させられることがあります。

雲南大学100周年記念の晩会

100周年記念のドローン

公園にて統一戦争の歴史に関する展示

公園にて偉人の名言

次に、「ありがとう」と「谢谢」の違いです。例えば、日本では店員が客に向かって「ありがとうございました」と言うのはある種の義務ですが、中国に来てからは一度も聞いたことがありません。また、私は日本のお店で品物を受け取った際などに「ありがとうございます」と言いますが、中国で同様に「谢谢」と言うと店員は無反応か「不用谢」と返されることがほとんどなので、最近はか細い声で「谢谢」と言うようになりました。これに関して、自分なりに考えた結果、日本人は実際に感謝しているかどうかはさておき、相手の言動に対する「返し」として「ありがとう」を言うのに対して、中国人は相手に感謝の気持ちを伝えたい特別な場合にのみ「谢谢」と言うのだという仮定に落ち着きました。多分、「ありがとう」と「谢谢」は言葉の重みが違うのだと思います。ただ私自身、他の留学生から「何で今“谢谢”と言ったの?」「沢山“谢谢”って言うよね」などと指摘を受けたことがあるので、中国人が特別というよりかは日本人、もしくは私個人が「ありがとう」と言い過ぎなのかもしれません…。

3つめは家族に関してです。中国人、特に中年以降の女性は知り合ったその瞬間から「私の娘はね、息子はね、」と家族の話が始まります。日本人だと「うちの息子は出来損ないで…」みたいな謙遜や愚痴を語る人が多いように思うのですが、中国人は「うちの息子は××大学を卒業して…」「本当に親孝行な娘で」というように子供を褒める人が多いように思います。また、中国では男女問わず結婚後もフルタイムで働く人が多いと聞いたことがあります。そのせいか、平日の昼間にはお爺ちゃんお婆ちゃんが大学構内で孫を遊ばせたり、一緒に食事したりしている姿をよく見かけます。そして、中国人の高齢者や幼児に対する対応は日本人も及ばないものがあります。地下鉄やバスで高齢者、幼児を抱えたお母さんが入ってくると、何人もの人が席を譲るために一斉に立ち上がります。また、日本だとバスや電車で熟睡している人が多いですが、中国ではあまり見かけないのも違いの1つです。

雲南大学構内の様子(呈贡キャンパス)

日中の異なる点について語ってきましたが、似ていると感じる部分も突き詰めれば少なからず差異があると思います。しかし、欧米などの国と比較すると、日本と中国の間には類似の文化が圧倒的に多く存在します。また、長きに渡る両国間の深い繋がりや思想的な面の共通点から、互いに共感できる部分が数多くあると思います。昆明に来てから、日本と中国の関係を「一衣带水的邻居」と表現する中国の方に何人か出会いました。互いの違いを受け入れながら、「一衣带水的邻居」の関係を今後も保てることを願います。

日中関係を「一衣带水的邻居」と表現してくださった先学期の班主任の誕生日パーティー