「文明度」森下雅洋(北京語言大学)

中国に一度でも足を踏み入れた人なら分かるであろう、街中にあるプロパガンダスローガン達。それに限らずニュース、新聞等、様々な場面で見かけることができる漢字達。特に中国に触れ始めた学生の頃、その漢字達のエモーショナルさに胸が躍る場面が多々あった。
私が先月のレポートにて開始した新聞記事マイニングを始めた理由はこの気持ちが蘇ったからだ。10月24日の人民日報は二十大の開催、習近平国家主席の重要講話の内容を高らかに報じた。党の成功や未来に向けた予想図、思想等を伝える記事内容、私が感心したのはこれらではない。記事の中にある賛美として使われる熟語達だ。「人民网10月24日、要聞4 光荣和梦想的远征」においてその賛美文は強烈だった。(もはや記事全文を引用しなければならない程である)
(http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2022-10/24/nbs.D110000renmrb_04.htm)
日本からのニュースでは「紙面では習近平国家主席及び中国共産党の成功を高らかに伝えた」で省略されてしまう文章は、もはや中国語の文法や語彙の理解が少ない人であっても、その漢字を見るだけで意味内容が理解できるそのような感覚に陥る。日本人ですらこう感じるのであれば、彼らはどの様な感覚になるのだろうか。
話は変わるが、中華人民共和国成立からおおよそ70年である。たった70年なのである。ましてや77年に文化大革命が終結、鄧小平の改革開放政策でやっと現世界社会に追いつき、GDPの名目数値上だけで見れば5位圏内にランクインしたのは05年である。短期間で急成長急拡大し続けている中国および人民は、中共主導の元で生活上無意識にでも目に飛び込んでくるその鮮烈なプロパガンダで日々教育され、現代世界社会に通用する価値観を急造し、刷り込んでいる最中であると思うと、その賛美文やプロパガンダオブジェ達はいささか効率的であり、その言葉と概念性の強さは簡単には理解できず、後々に身に染みてわかる両親の躾のようなものを感じる。
中国の現状は、中国共産党及び中央政府、さらに国際社会(G20等先進国)が要求する文明度と人民が既に到達したと自負している文明度に圧倒的な乖離が存在する。却って日本は中国および中国国民が現在既に急速に到達したある一定程度の文明度や社会的重要性を感情論で理解しようとしない。日本人からすれば彼らは傲慢で無礼であり、中国人からすれば彼らは我々を正しく理解しようとしない。これが現段階で私が結論付ける現在の日中間の庶民的対国感情の懸案、矛盾点である。
この結論に至った事により、コロナ禍の日中両国の動乱とそれへの評価、中国の傲慢とも取れる態度であったり、以前の「爆買い」のころより散見された中国人のマナー問題やコロナ禍の往来回復に対する両国民の姿勢や態度への合点が付いた。
もはや国際人文学や国際政治学のような領域であるが、マイペースに学習を進め、更なる中国への理解を深めていきたい。

架橋にも二十大スローガン

朱家角にも

市場にもあるスローガン

上海人民広場にも

脱貧を果たした北京郊外のレンガ造りはハリボテである

駄菓子屋にもある

二十大前隔離移動中の天津でも