日本語指導員
藤澤さゆりさん
千葉県出身。大学時代に中国語を学び半導体の専門商社に入社。上海駐在中体調を崩したことをきっかけに、帰国後日本語教師の仕事に興味をもち、有償ボランティアに登録。小学校での取り出し指導を通じて、現場で痛感した課題を広く知ってもらうため、2025年に全日本中国語スピーチコンテストで外国人児童の教育問題について発表し、最優秀賞を受賞した。登録日本語教員の資格を取得し、現在は区立の幼稚園・小学校で中国人児童の通訳支援及び日本語指導を行っている。
大学時代に中国語を学び、留学もしました。就職した商社で何年もかけて掴んだ中国駐在中に体調を崩してしまい、帰国後、新型コロナが発生。今後のことを考えました。自身に能力をつけ、「自分」が必要とされる仕事をしたい。教育分野に目を向け、休職の間、入院中に日本語教師の資格勉強をしました。
退職後、日本語教師の仕事を探している中、区のHPで偶然、区立小学校の中国語の通訳支援員の求人を見つけました。一般的な求人サイトに掲載がないので、見つけにくかったです。しかも有償ボランティアで、すぐに安定した依頼が来るわけではありませんでした。登録後1年くらいは依頼が来ず、その間は中国語を忘れないために中国人経営のお店で働くなどしました。
ある日突然学校から電話がかかってきて、週何度か小学校に行き授業の通訳支援をすることになりました。入り込み授業で児童の隣に座り、一緒に授業を受けるスタイルでの通訳です。国語と道徳の通訳が特に難しく、しかも日本語は主語を省略するのでわかりにくく、対象児童に説明する時は、登場人物を色分けしたり絵を描いたりして工夫しています。道徳も、当たり前のように書かれている行動や思考が中国人児童にとっては知らないことなので、説明に苦慮します。
その後、別の区で中国人児童対応の日本語指導員の募集があるということを紹介され、こちらにも登録しましたが、すぐに依頼を頂け、私の生徒は一気に30人ほどまで増えました。取り出し授業で1対1~2での個別指導です。中国人児童たちは、日本語ができない中で日本の学校に入り、同級生が何を言っているのかわからないまま黙って過ごしている子も多いです。私の日本語の授業に来ると、母語で話せるのが嬉しいようです。せめて私の授業中は笑顔で日本語を覚え、いずれ同級生とも話せるようになり、学校が楽しいと思ってほしいと願いながら指導をしています。

驚いたのは、中国人家庭の教育熱心さです。子どもに早く日本語能力試験N3を取らせたいと言われ、私が「まずは友達と楽しくお喋りできるようになればいいのでは?」と言うと、目から鱗といった表情をしたのです。また、児童に作文で夏休みの予定を書いてもらうと、勉強の予定しかありません。休みに遊びに行くという概念がないようでした。
私の仕事は、中国人児童が学校に馴染めるようにサポートすることです。それには、日本語だけではなく、日本の小学校特有の文化も教えなければなりません。給食や掃除当番、避難訓練の合言葉など。しかし指導員のうち約半分は中国人で、日本の小学校文化を知らず、そこまでのサポートに至らないことも多く、指導内容も指導員の裁量なので落差があります。中には発達が遅れている中国人児童もいて、特別支援員としてその子たちをサポートしたこともあります。通訳支援・日本語指導・特別支援を経験し感じたことは、指導員の待遇の見直しも必要だということです。受け入れ体制が整わないうちに外国人児童は急増しています。私はこの仕事がとても楽しく、やりがいを持って取り組んでいますが、このような環境でいつまで続けられるのかわかりません。ぜひ日本社会にはこの課題に向き合ってほしいと思っています。
(聞き手:理事 小田玲実)