物への好奇心・欲望、そのエネルギーが向かった先

2020年3月1日号 /

写真家・文筆家 藤原新也さん

1944年福岡生まれ。東京芸大を中退後、インドを中心にアジア各地を放浪。著書は『印度放浪』『メメント・モリ』『西蔵放浪』『東京漂流』他多数。1978年『逍遥游記』他で木村伊兵衛賞、1982年写真集「全東洋街道」で毎日芸術賞を受賞。

 

インドの情景に生命を鼓舞され、そこから十数年間、何かに突き動かされるようにアジアを旅し続けてきた藤原新也氏。その目に映る中国とは―。

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上海人の眼には非常に用心深くて神経質なほどの好奇心がある―
(中略)物をたえず意識し、そして見ているせいではなかろうかと思った。(中略)ただ、中国の場合、それは物が欠乏しているからと言うことのみでなく、一つには中国の血、あるいは民族性からくるものではないか。と言うのは、私はこれまで上海よりも、さらにずっと物の欠乏した国や土地を歩いて来た。(『全東洋街道』より)

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1979年、上海の街の様子をこう表現した。
「人民服の群衆の中で旅行者が一人うろついている光景は珍しく、みんなが僕を取り囲んで手に持ったカメラをじーっと見ている。物に対する欲望、そのエネルギーがものすごい民族だと感じた」―(続きは本誌で)