香港・マカオの「ちょっと穴場的」ガイド ➄

亜熱帯気候に属する香港は、年間の平均気温が約24度。「ちょっと涼しい」と感じる12~2月を除けば、いつでもビーチのオンシーズンといえるだろう。

賑やかでエネルギッシュな香港も楽しいが、都心の喧騒から離れ、ぼんやりと青い海を眺めながら心静かに過ごす時間は贅沢このうえない。今回紹介する4つのビーチは、平日に訪れれば混雑とは無縁で、いずれも公共交通で手軽にアクセスすることができる。

素朴な味わいの石澳村

温暖な海に囲まれた香港では、ほぼ一年を通して、風光明媚なビーチでゆったりとした時間を過ごすことができる。週末は混みあう時期もあるが、日本のように海水浴シーズンが7・8月に集中しているわけではないので、「人が多過ぎて落ち着かなかった」という状況はまずないだろう。

平日の石澳村はご覧のとおりの静けさだ

「香港で最も美しい漁村」といわれているのが、香港島の東端に近い石澳村だ。アクセスは、MRT港島線の筲箕灣駅A3出口前のバスターミナルから出ているバスで30分ほど。市街地を抜けると、バスは緑豊かな山道を登っていく。高層ビルばかりの香港にもこんな大自然があったのかと思っていると、突然、眼下にオーシャンブルーの絶景が。乗客たちから「おー」という声が漏れ、みな一斉にカメラを向ける。途中、高級別荘ふうの建物をいくつか目にした。近年、欧米からのセレブな移住者が増えているとのことだから、彼らの住居だろうか。

石澳村へ向かうバスからの眺めも素晴らしい

石澳村のバス停に降り立った瞬間、爽やかな海風を感じて、一気に身も心も軽くなる。ビーチに腰をおろせば、視界に入るのは、どこまでも青い空も海ばかりで、波の音しか聞こえない。訪れたのは11月下旬だったが、海水は温かく、泳いでいる人も少なくなかった。

波の音だけを聞きながら過ごす

村は200年以上の歴史を有する。いまは人口が減少して活気が失われてしまったものの、漁師町だけあって、海の守護神である天后廟が大切にされているのが伝わってきた。

地元の信仰を集めている天后廟

小さな集落は、どこか懐かしさを感じさせる。こんな静かな香港が、昔はあちこちにあったのだろう。

MRT港島線、東涌線、機馬快線(エアポートエクスプレス)などが乗り入れる中環(セントラル)駅のバスターミナルから赤柱(スタンレー)行きのバスに乗り約25分。超高級マンションが集まる淺水灣(レパルスベイ)は、香港人にとっておなじみのビーチリゾートだ。

淺水灣で遊ぶ子どもたち

素朴な味わいがある石澳村とは対照的なエリアだが、リゾートといっても高級マンションの住人だけではなく、誰もが気軽に楽しめる庶民的なビーチである。ここは往年の名作ハリウッド映画『慕情』の舞台となったことでも知られる。

山側にそびえる歴史あるマンション

ビーチを一望する山側にそびえる、中間階部分に吹き抜けがある個性的なデザインのビルが淺水灣のシンボルだ。20世紀初めにホテルとして建てられたもので、現在は上層階が高級マンション、下層階がレストランやショップとなっている。

高級リゾートエリアだがビーチは庶民的だ

私事で恐縮だが、30年以上前、筆者が初めて香港を訪れた際、現地在住の知人がここへ連れてきてくれ、美しいビーチと瀟洒なマンションの西洋テイストあふれる景観に感動したことを思い出した。ビーチ周辺は、30年前とそう変わってないように感じたが、久しぶりに再訪した思い出の地が、昔のままで迎えてくれるのは嬉しいものである。

西貢から離島の橋咀洲へ

九龍半島側にも、おすすめのビーチがある。新界地区の東岸に位置する西貢だ。

元々は客家の人たちが暮らす静かな漁村だったのだが、いまは海沿いに軒を連ねる海鮮料理店を目当てに、休日になると多くの人が集まる観光スポットとなっている。いろいろなところからバスが出ているが、MRT屯馬線と觀塘線の鑽石山駅からのアクセスが便利だろう。

桟橋を歩いていると、離島へ向かう遊覧船の小さなオフィスがいくつかあり、次々と声をかけられる。橋咀洲という島へ渡ってみることにした。

西貢から離島へ向かう船
風を感じるのが気持ちいい

短い船旅ながら、降り注ぐ強い日差しと潮風が心地よい。日本人にとっては、季節が晩秋から真夏に逆戻りしたかのように感じる。

真っ青な海が迎えてくれる橋咀洲

橋咀洲の海は、透明度が高く、まったく泳げない筆者は、潜れる人が羨ましかった。石澳村、淺水灣にもいえることだが、日本の有名な海水浴場と違うのは、ビーチで飲酒して盛り上がっている人など皆無で、みな純粋に海を満喫しているところだ。海の家のような店舗がなく、余計なBGMが流れておらず、ゴミが落ちていないのもいい。何をするわけでもなく、ただ海辺で過ごす時間は贅沢このうえなかった。島の奥まで足を延ばせば、火成岩のダイナミックな地形が眺められるので、次回は散策路を歩いてみたい。

細長い砂洲を歩く人たち

マカオのタイパ島東岸に広がる黒沙海岸。マカオ観光の中心、セナド広場のバスターミナルから、橋を渡って約30分で着く。黒っぽい砂の色が名前の由来だが、元々はふつうの白い砂で、海底の成分を含んだ波が打ち寄せるうち、変色していったのだという。漢字表記は「黒沙」なのに、英語名は「白砂」をイメージさせるハクサビーチとなっているのが面白い。

黒っぽい砂で知られるマカオの黒沙海岸

この日はたまたま、水上バイクの大会を開催しており、少々落ち着かなかった。仕方なく会場から離れていくと、そこは穏やかな別世界。これがいつもの姿なのだろう。

(内海達志)