日中の軌跡、75人の証言として記録

2200円(税込)
2025年4月2日、東京・多元文化会館にて、日中文化交流誌『和華』の第45号として刊行された書籍『75人が語る 私が歩んだ日本・中国』の出版を記念する交流会が開催された。日本と中国の間を生きた人々の歩みに焦点を当て、世代と国境を越えた日中交流の記録として大きな反響を呼んでいる。
本書は、日中TV代表で映像クリエイターの劉傑氏が制作したインタビュービデオ『45年45人』『我と祖国』をもとに、映像で語られた75人の体験談を文字化し、編集部が新たに構成したものである。20代から103歳まで、さまざまな時代と立場で日中交流に関わってきた証言者たちの生涯が収録されていると言っても過言ではない。「華僑華人編」と「日本人編」の2部構成で、日本と中国をまたいだ人生の軌跡が、時代背景とともに描かれている。
交流会には、中華人民共和国駐日本国大使館領事部から陳巍公使参事官兼総領事、王宝锋領事をはじめ、日中の平和友好に尽力してきた政界・学術界・民間団体の著名人など同誌の取材を受けた関係者60名ほどが出席した。元国会議員の戸塚進也氏、日中友好会館の黄星原中国代表理事らが代表でスピーチを行うとともに、インタビュー映像のダイジェスト放映や懇親会など、和やかな雰囲気の中で交流が行われた。(公社)日中友好協会の岡崎温副会長、西園寺一晃顧問、東京都日中友好協会の永田哲二副会長も誌面に名を連ね、当日は記念式典にも出席。映像を鑑賞しながら、多くの参加者と交流を深めていた。
書籍に収められた証言は、いずれも個人の体験に根差しており、単なる歴史の回想ではなく、感情や葛藤を伴うリアルな声が並ぶ。戦争体験を語る高齢者、中国との出会いで人生が変わった若者、自身のルーツを問い直す中で「自分は日本人なのか中国人なのか」と悩んだ人など、語り手の姿は多様だ。家族、教育、文化、ビジネス、移住、芸術など、それぞれのテーマを通じて浮かび上がるのは、「隣国との対話とは何か」を問い続ける人間の姿である。
交流会では、インタビュー映像の一部が上映され、書籍には記録しきれない声や表情が、参加者により強い印象を残した。「記録があるからこそ、未来への対話が始まる」と話す来場者もおり、書籍としての出版に加え、映像と組み合わせたアーカイブとしての可能性も感じさせた。

『和華』編集部は本書について、「日中交流を記録することで、過去を見つめ、次の世代への橋渡しをしたい」と意図を語る。いずれの証言にも共通しているのは、異なる国や文化を越えて人と人がつながろうとする誠実さである。政治や外交の動きが複雑さを増すなか、こうした市民目線の交流記録は、日中の関係を足元から支える力を持つ。
今後も多くの活動を通して、より多くの人々に本誌が届けられることが期待される。記憶と対話をつなぐ一冊として、『75人が語る 私が歩んだ日本・中国』は、両国の未来に向けたメッセージを静かに発し続けている。
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