薬師寺の婁正綱―遊山翫水 プレス内覧会に参加して

2025年6月1日号 /

薬師寺東塔(国宝)

4月24日、ユネスコ世界遺産に登録された、法相宗大本山薬師寺の東院堂(国宝)にて、書画家婁正綱の屏風作品が披露され、その内覧会に参加した(会期終了)。

内覧会の案内は、東京の(公社)日中友好協会(全国本部)に届いたが、現地で対応しなさいとのことで、私が出席した。個人的な話で恐縮ですが、ここ薬師寺は拙宅から徒歩10分ほどのところで、庭のような所だ。

婁正綱氏は、中国の作家。生まれ育ったのは、中国の黒竜江省。文化大革命が始まる1ヶ月前の1966年6月6日に生まれ、3歳にして既に筆を持ち、幼少の頃より墨絵を描いて遊んでいた。1970年代末に、北京にある300年以上続く老舗の画材店・栄宝齋で日本の書道家代表団と邂逅し、書の実演を行って、驚嘆させたという。

婁正綱の絵画は、豪胆さと繊細さを併せ持つと同時に絵画の質においては群を抜いている。それはすなわち、画家の感性と特別な技量に起因する。遊山翫水―婁正綱の制作は、しばしば自らの画室を囲む山や海などの美しい自然の景色に触発されている。この度は、2015年に制作された3点の作品が、国宝薬師寺東院堂で公開されることになった。

薬師寺東院堂は、養老年間(717~724)に、長屋王の正妃である吉備内親王が母の元明天皇の冥福を祈り、建立した。現在の堂は弘安8年(1285)に再建されたもので、鎌倉時代後期を代表する和様仏堂として国宝に指定されている。また、堂内の本尊・聖観世音菩薩と四天王立像は白鳳時代の仏像で、それぞれ国宝、重要文化財に指定されている。

(奈良県日中友好協会事務局長 神澤章)

「薬師寺の婁正綱 ― 遊山翫水」会場風景
(会期:4月24日~5月11日/会場:薬師寺東院堂)
「薬師寺の婁正綱 ― 遊山翫水」展会場の薬師寺東院堂(国宝)

(補足)
日本画家で(公社)日中友好協会第4代会長の平山郁夫氏(1930~2009年)は薬師寺と深い関わりがあり、特に、薬師寺の玄奘三蔵院伽藍(げんじょうさんぞういんがらん)に奉納された「大唐西域壁画」は平山先生の代表作の一つです。「大唐西域壁画」は、年に2回ほど公開されています。