“本命年” と「厄年」

2026年1月1日号 /

新年を迎えて

2026年がやってきた。日本では、1月1日をもって、丙午という午年に入る。しかし、太陽暦と太陰暦を併用している中国では、干支から言えばまだ蛇年のままで、午年は2月17日を待たなければならない。

新しい年になると、その年生まれの人にまつわる色々ないわれが語られる。日本では、その年生まれの男性なら「年男」と言い、女性なら「年女」と言う。しかし、中国では、日本語に当たるこのような言い方がなく、代わって〝本命年〟という言い方がある。

「本命」とは「生まれた年の干支」を指し、〝本命年〟は文字通り、その生まれた年の干支にあたる年のことである。ややくどいような言い方だが、今年は誰彼の生まれた年と同じ干支の年という意味で、誰彼の〝本命年〟と言う。これは男女を問わず、その年生まれの人のことを言う言葉である。

ネット上では、中国語の〝本命年〟は日本語の「厄年」に訳されたりしている。しかし、日本語の厄年は中国語の〝本命年〟とだいぶ違う。中国語の〝本命年〟は、その人の生まれた年そのものを指すのであって、12年一回りすれば、だれもがその〝本命年〟を迎えることができる。これに対して、日本語の「厄年」は、一部誕生年の干支と重なる場合もあるが、社会的、文化的に決まった年のことであって、中国の〝本命年〟とは同じではない。

健康祈願の契機

日本語の厄年は、普通、数え年で計算する。神社によって異同があるが、大体、男性は25歳、42歳と61歳で、女性は19歳、33歳、37歳と61歳が厄年とされている。上記の男性、女性別々の厄年のほか、男女共通の厄年を挙げている神社もある。

「厄年」とは、「厄」という漢字で示されているように、「苦しみ、わざわい、災難」を伴う年とされている。12年も一回りしたら、精神的にも身体的にも一定のダメージを受けているので、干支と重なる年は、一休みなり、何らかのリフレッシュが必要となる。干支と重なる年は別にして、例えば、男性の42歳は、働き盛りの年で、大体、会社などでは中堅的な存在になっているし、家庭では大黒柱になっている。女性の33歳は、家庭では出産、育児、社会的には、会社などで重要な責務を負うようになっている。男性の42歳も女性の33歳も、そのような年になると、いろいろなプレッシャーがかかるし、ストレスを感じ、身体的にも、心理的にも大事な年となっている。そこで、日本社会では、これらの人々は、これを機に神社などを参拝して、厄祓いをし、今後の人生の一層の発展を祈願し、祝ったりする。

一回り前のことだったが、田舎から北京へ来て40年以上経った還暦の〝本命年〟、伝統的なしきたりの記憶が褪せていた時、甥が赤いベルトを祝いにプレゼントしてくれた。中国では、〝本命年〟の人は、赤い色の服や装飾品類を身につけるしきたりがあるのだ。

神社への参詣、赤い服飾品の着用、形こそ違うが、無病息災、安全健康を祈る気持ちに違いはない。

(しょく・さんぎ 東洋大学元教授)