「足」と「脚」の話

2020年5月1日号 /

くるぶしより下を日本では「足」、中国では「脚」

ある会合で、日本人の生活スタイルの変化で「O脚」が少なくなってきたという話になった。しかしそれよりも、日本語の「足」と「脚」の違いがずっと気になっていた。

動物や昆虫など陸生動物のほとんどは足を持っている。人間は2本の直立する足で体を支えているが、他の動物は4本以上の足で行動する。人間の足は、「股から膝まで」「膝からくるぶしまで」「くるぶしから下まで」の3つに分かれる。

この3つの部分を、中国語では“大腿”“小腿”“脚”、日本語では中国語同様「大腿」という言葉もあるが、普通は「太もも」、「すね」「足」である。中国語では“大腿”“小腿”の総称を“腿”と言うが、日本語では特にない。

しかし、上記の「O脚」は、他でもなく太ももとすねの部分を表している。ここでわかるのは、太ももとすねを「脚」と総称している点。「脚」を使った様々な日本語があり、「美脚」や「脚線美」などはとてもいい言葉だが、「O脚」や「X脚」などは、いささか気が引ける言葉である。

一方、アメリカの小説『あしながおじさん』の「あしなが」は、「脚長」とするべきであろうが、物語では「足が長い」という言葉が目につく。日本語の場合、訓読みはどちらも「あし」なので、漢字にこだわる人でなければ特に違和感はない。

例えば、「足を踏んだ」は「足」に決まっているが、「足を上げる」は、前記の踏んだ時の足も、体操などの足全体を指す場合もすべて「足」でいいが、中国語では前者は“脚”、後者は“腿”を使う。

“脚”“足”“腿”の活用

現代の中国語では、くるぶしより下の部分を“脚”と言っているが、街には“足疗(療)”や“足浴”などが目に付く。“足浴”は日本語の「足湯」的な使い方だが、“足疗”は足の様々なツボのマッサージを通して、病気を治療したりすることである。

“脚”ではなく“足”を使っているのは、“脚”はあくまでも話し言葉であって、“足”は書き言葉、雅言だからである。

「O脚」を、昔は「がにまた」と表現していた。若者には理解しにくい言葉だろう。中国語には“罗圈腿”という昔ながらの言い方がある。しかし今は、日本語の影響か、“O型腿”と言うようになってきた。「X脚」も“X型腿”というのである。

座るとき「足を出す」と悪いマナーとされるが、金銭的には「足が出ない」ように気を付けたいものである。

(しょく・さんぎ 東洋大学元教授)