苦い漢方薬を毎日のように胃に流し込み、学生として学びながら新米日本語教師として教壇に立つ――。振り返れば、私の中国留学生活は、まさに全力で駆け抜けた日々でした。
元々、中国語圏への留学経験はありましたが、今回の留学生活では、怒涛のようなインプットとアウトプットを繰り返す中で、私の視点はさらに現実的で確かなものへと深まりました。休暇を利用して各地を巡り、ハルビンで铁锅炖を囲み、贵阳で酸汤火锅を味わい、南京の街を中国人の友人と歩きながら歴史について語り合った時間。そこで得た最大の収穫は、頭で理解していた概念を超え、「現地の生の情報や人の温もりに直接触れた」という確かな実感でした。
特に印象的だったのは、地域や出会う人によって、見えている世界や価値観が大きく異なるという発見です。政治や行政の中心である北京で出会った友人たちと、商業やITが発展した杭州で再会した友人たちでは、社会への関心や物事の捉え方が大きく異なっていました。
日本で知り合った友人たちと杭州で再会した際、デジタル社会や情報環境について話す機会がありました。友人は「没有隐私啊(プライバシーなんてないよ)」と笑いながら、日常生活の中で感じていることを率直に語ってくれました。しかし同時に、「メッセージや通話では話しにくいこともあるけれど、こうして直接会って話す分には大丈夫」と話してくれたことが印象に残っています。
その時、中国でよく使われる「上に政策あれば、下に対策あり(上有政策,下有对策)」という言葉のように、人々が環境に応じて柔軟に対応するたくましさを肌で感じました。外側から見える一面的なイメージの裏には、人々が日常の中で工夫しながら暮らす、多層的な現実があります。こうした現地内部の多様な実態を自分自身で確かめる面白さを知り、私はすっかり「中国ウォッチ」が趣味と言えるほど関心を深めました。
これらの経験と今回の奨学金による学びを糧に、大学卒業後は中国語圏の大学院へ進学・留学するという次の目標を定めました。奨学金によって磨かれた中国語力は、現地で生活し、人々の発信や考えに直接触れるための大きな力となりました。この力を生かし、表面的なイメージに惑わされず、多様な現実を読み解く学びをさらに深めたいと考えています。
今回の留学経験から得た、これから先、私が大切にしたい姿勢は二つあります。
一つ目は、背伸びをせずに、今の自分にできることを一つひとつ丁寧に積み上げていくことです。学生でありながら、日本語教師として教壇に立つ毎日は簡単ではなく、自分の力不足に悩むこともありました。しかしそれと同時に、目の前の学生や友人に誠実に向き合うことの大切さを学びました。大学院進学やその先においても、大きな目標だけに気負うのではなく、その時の自分にできる努力を積み重ねていきたいです。
二つ目は、大きな主語や世間のイメージに流されず、ありのままの事実と目の前の個人を見ることです。私が中国で出会ったのは、一つの記号としての「中国」ではなく、苦い漢方薬を飲みながら励ましてくれた先生や、それぞれの考えを持って生きる友人たちでした。
「日中の架け橋になろう」と大きな言葉で構える前に、まずは自分の目で見て、耳で聞いて確かめた実感を大切にすること。苦い漢方薬を飲みながら目の前のことに必死だった日々と、中国を知る楽しさを胸に、中国語圏の大学院進学という目標へ向けて、これからも自分にできることを一つずつ重ねながら進んでいきたいと思います。




