「直接向き合うことで見えてくるもの」― 私の日中交流の原点

2026年11月1日号 /

友好訪問プロフィール

日中ビジネスコンサルタント

岩﨑いわさき元地もとじさん


兵庫県出身。天理大学国際文化学部中国語コース卒業、北京語言大学大学院修了。中国メディア勤務、日中ビジネス支援、ByteDanceでの事業開発などを経て、日中双方の現場で活動。言語・文化・ビジネスの領域を横断しながら日中交流に携わる。

ネイティブを目指して―中国語とともに歩んだ20年

神戸で生まれ育ち、「一つでも多くの言語を学び、社会に貢献できる人間に」という両親の思いもあり、中国の血筋はないものの、華僑の子どもたちが多く通う神戸の華僑学校に入学しました。歴史的に中国と縁のある土地柄でもあり、自然と中国語や中国文化に親しみを感じて育ったことが私の日中人生の原点です。

天理大学で中国語を専攻し、北京師範大学へ1年間交換留学を経験しました。北京でタクシーの運転手から「お前は日本人か?韓国人か?」と聞かれ、自分の中国語の拙さを早速痛感。悔しさから猛烈に中国語学習に勤しみました。帰国後も指導教官とスピーチコンテストへの出場を重ね、最終的に「漢語橋」という中国政府主催の世界大会で、特等賞と僅か0.3ポイント差の一等賞の成績を残しました。中国の大学院に無償で進学できる切符も手にし、大きな自信となりました。

大学院では日中通訳カリキュラムを有する北京語言大学に進学。「自分はどんな仕事で中国語を活かしたいんだろう」と、自問自答する時期となりました。答えは、北京で就職し〝中国社会の中で中国社会への理解を深める〟こと。中国網(チャイナネット)というニュースメディアで1年、その後人民日報ウェブ版・人民網の日本チャンネルで2年。日中の草の根交流を紹介するコーナーも担当し、現場のリアルを取材・配信しました。

滞在が7年を超え、ふと「日本についてあまり知らない」ことに不安を覚えました。社会、文化など日本の話が中国人から出るたび、私が一番ついていけないシーンが多々。「日中交流に携わる身として、日本のことも知っておかなくては」と。

その矢先、東京の中国人の友人が、「東京で一緒に日中協業支援の会社をしないか」と声をかけてくれたのです。主に中国企業の日本進出や日本の政治家との交流会の支援でしたが、様々な中国企業の代表に対応する中、中国ビジネスマンのエネルギーを改めて実感しました。さらに、北京に本社を置くByteDance社が日本法人を立ち上げる際、正社員として迎えられる幸運に恵まれ、前出の中国人の友人も「またとないチャンスだ」と転職を勧めてくれました。TikTokをはじめ多くのサービスの日本展開などの業務に7年従事し、世界中の社員から選出されるグローバルアワードに輝きました。中国語、そして幸運と流れに身を委ねて歩んだ卒業後の20年でした。

両国の相互理解のために―日中を軸にこれまでも、これからも

両国だからこそのネガティブなシーンにも時折直面します。そんな時いつも感じるのは「直接交流することの大切さ」です。

中国滞在中、私は度々北京で日中交流会を企画しました。そこに、中国人の参加者が別の中国人のZ君を連れてきました。後に知るのですが、彼は大の日本嫌いでした。しかし参加を重ねるうちに少しずつ変わり、ある時私に「日本人のイメージが180度変わった」と言ったのです。私たち日本人は彼を特別持ち上げたり、殊更に日本を美化して紹介したり、といったことはしていません。皆で公園を散策したり語学を教え合ったりランチをしたりと、〝普通〟の交流をしていました。それでもZ君が日本人を受け入れるようになった理由は、なんと〝普通だったから〟です。「日本人も普通じゃないか。なんならちょっといい奴じゃないか」。そう思えた瞬間、嫌いどころか好きになれたわけです。

日本人と聞けばネガティブな報道・作品のイメージが出てくる人が如何に多いか。近年多くの観光客が来日し、リアルな日本の姿を見てほとんどが好印象を持って帰国するというアンケート結果を見ました。両国にとって間違いなく良い変化です。

私も自然体で一緒に仕事をしているだけで国際交流となり、とても有意義だと思えます。中国人観光客に道を教えてあげる、そんな些細なアクションだけでも立派な国際貢献になるという幼少期の母の教えの意味を改めて実感しますし、彼らと接する一人一人が国際貢献していることに気付いてもらいたいです。

相手を知る意味で中国伝統文化の「変面」を中国人師匠の下、1年かけて学びました。言葉だけでなく文化も身につけたいという思いが実を結びました。先日は縁あって北京の日本大使館で披露しました。中国文化、中国に興味を持ってもらおうというプチアクションで、自己満足でもあります(笑)。

直近1年間は日中ビジネスコンサルタントの傍ら、次の10年を模索しています。今後も日中交流を軸に邁進し、後輩たちの参考やアドバイザーとなれるよう、文化、教育、外交などより幅広いジャンルに視野を広げていきたいと思います。
国と国との関係も、突き詰めれば一人一人の交流の積み重ね。その思いを大切に、挑戦を続けていきたいです。