科学技術文化の全分野で 日中交流をさらに展開させたい

2018年10月1日号 /

一般社団法人日中科学技術文化センター理事長
埼玉工業大学副学長
巨 東英(きょ とうえい)さん

1954年山東省濰坊(いほう)市に生まれる。河北科技大学を卒業後、助教を経て清華大学大学院に入学。その後京都大学大学院へ留学。博士課程を卒業、工学博士を取得。2006年、07年に国際智能製造システム機構(IMS)最優秀論文賞を2回受賞。現在、埼玉工業大学副学長(研究・国際交流担当)先端科学研究所所長(兼任)

 

 

大学の副学長を務める傍ら、昨年6月に凌星光氏(福井県立大学名誉教授)の後任として、まもなく創立40周年を迎える(一社)日中科学技術文化センターの理事長に推挙された。

山東省出身。来日30年以上。日本への関心には少なからず長姉の存在がある。
姉が北京外大で日本語を学んでいた文化大革命さなかの1968年のこと、周恩来総理の思いは日中関係の回復に向かっており、北京外大などで日本語を学ぶ学生たちを湖北省沙市に集めた。姉を含む学生らは集中的に日本語を学習させられ、田中角栄氏の訪中のひのき舞台で日本の新聞記者たちの通訳として活躍した。姉はその後、日本での兵馬俑の展示会で来日。当時、清華大学に在学中だったが、その姉の勧めもあり日本留学を決めた。

恩師の勧めもあり日本に留まった

1986年、北京の清華大学から京都大学大学院に留学。勉学後は帰国して研究者として進む道もあったが、中国の恩師のアドバイスもあり、さらに研究に集中するため日本に留まり学究生活をすることを決意。鉄鋼関係の研究で博士号を取得し、その後、埼玉工業大学教授を経て2011年4月には同副学長に就任した。社団の理事長として今、3つのことを考えている。まず第一は、日中間を仲よくいい関係にしたいということ。「これは私の使命でもあります」。そう言うだけあって力強いメッセージとして聞こえた。

「第二は、日中間の科学技術文化交流の進展です。科学技術の基礎研究では日本がまだやや優位に立っている。しかし中国は発展する国として市場も大きく、日本はこれを無視することはできません。日本がさらに発展するためには日中間の協力関係をさらに強くすることが重要です」

良好で永続的な日中関係を

「現在、中国は経済の発展速度を調整し、環境を重視する安定的な発展モードに切り替えている時期です。一方、日本も高齢化・少子化問題を解決しながら安定した経済成長を考えているところでしょう」

こうした状況を見て、第三として「これからは両国ともに安定的な経済発展がとても重要な課題であり、この共通点を見ても、日中両国は平和で友好な関係を構築しなければなりません」と強調した。

現在、日中科学技術文化センターは技能実習生、インターンシップ、留学生、介護業務などの事業分野を次々と拡大している。かじ取り役を担いながら、「使命感をもって各界の要請に応えて、成果を出したい」と張り切っている。
(大類善啓)