中国の流儀を理解し 日本人であることを大切に

2020年12月1日号 /

 

女優・モデル・通訳
古川 智子さん

1990年大阪府生まれ。高校3年で大連に短期研修。武庫川女子大学生活環境学部生活環境学科アパレルコース卒業後、アパレル系企業に就職。2017年台湾に語学留学。2019年「アパマンショップ」広州天河区店に就職。2020年7月、日立のエレベーターCMキャストに起用される。現在、女優・モデルと共に現場での通訳を行う傍ら、上海戏剧学院の生徒に。日中国際センター株式会社所属。[世界ウーマン] https://www.sekaiwoman.com/columns/nihao/ に毎月投稿

 

撮影現場で日中の橋渡しを目指す 

 

たおやかな着物姿の日本人女性役(日立エレベーターのCM)、中国にやってきた大阪のご令嬢役(映画)… 中国語と広東語が飛び交う活気溢れる撮影現場で、大勢のスタッフに囲まれての初演技。広州で出会って親交を深めた日本人男性とのつながりから、突然の「女優業」がスタートした。

昨年7月、「アパマンショップ」広州天河区店に就職したのをきっかけに、広州で暮らし始めた。「友達0、知り合い0、土地勘0。上司が初めての知り合いという心細い状況で、台湾で勉強した日常会話の中国語だけが頼りでした(笑)」

仕事は、広州に住む日本人に向けた不動産の紹介・販売。もともと広州に約8000人いた日本人が、コロナ禍による撤退、業務の縮小でその3分の1以下に減ってしまった。本来は3月から繁忙期に差し掛かるところが、訪問禁止で新規顧客獲得不可な上に、既存客も減少傾向に。

「ネットでの集客も結果が出せず。ホームシックに…」。帰国もできない中、気分転換で始めた海外で働く女性向けメディアへの寄稿や、中国の友人と立ち上げた日中交流会のイベント開催などで徐々に奮起。そんな折、不意に訪れたのが冒頭の女優業の話だった。

高3で初訪中

中国との縁ができたのは高校3年生の時。中国語の授業のおもしろさに一気に惹き込まれ、夢中になった。その様子を見ていた中国語教師からの「2週間の大連の研修旅行に行ってみては?」との誘いに、すぐさま乗り気になった。

「友達からは『何で今中国?』って聞かれることもありましたが、『ただ行きたいから!』って(笑)」。
初めて踏んだ中国の地。言葉は話せなかったが、日本で知った中国と、実際に感じた中国は違った。人は優しく、ご飯は美味しい、良い印象しかなかった。

台湾での1年間の留学

大学ではアパレルを専攻、中国語は授業のある時と、時間があれば勉強する程度の関わりに。卒業後はアパレルブランドに就職した。慌ただしい日々が続く中でふと自分の将来に目を向けた時、「人に誇れる専門分野を身につけたい。高校生から続けてきた中国語をとことん極めてみたい!」 と語学留学を計画。

留学先は、当時若い女性の間で大流行していた台湾にしようと、視察がてら旅行で一度、現地を訪れた。空港に着いた途端、一気にその雰囲気に惹かれた。その勢いで、留学実現のために掛け持ちでバイトをして貯金し、2017年から1年間留学。帰国後、中国語を生かすために成田の免税店に勤務し、18年チャイナフェスティバルのボランティアでは通訳も経験した。

広州に住むきっかけとなった不動産業は、女優、モデル、現場の日本人俳優の通訳を本業としていくために、今年10月に退職。「演技はまだまだ初心者。大学4年間のモデル経験も生かし、通訳と合わせて精一杯やってみます!」。人懐っこい笑顔が魅力的で、進取果敢。

中国社会に順応しつつも日本人としてのアイデンティティを失わずに進みたい。

(本紙 小金澤真理)