国家機密と芝居稽古

先月は変面を使った一人芝居の本番を控えていたこともあり、稽古漬けの日々だった。

変面を現代的なお芝居の中に取りいれた本公演は、一見聞こえは簡単そうだが、実際には想像以上に難易度が高い。

何が難しいかと言えば、外国人が日本語で、一人でやるということもそうだが、一番は、一緒に劇を作っている演出家や日本のスタッフに、「変面の仕掛けの秘密」を教えることができないという点だ。衣裳制作の打ち合わせや、役の動作、髪型一つを取っても、仕掛けに関わるため教えることができない。

ある程度事情を理解していたスタッフもこう言われるとお手上げ状態だ。演出家が思い描く形に仕上げたくても、「国家機密」がそうはさせてくれない。双方の主張がぶつかり、中々思うように進まない時期もあった。

日本語での演技もより一層磨きをかけないといけないが、変面の衣裳制作も他のスタッフには勿論手が出せず、自分でやるしかない事もあり、進捗がどうなっているのか心配の声が上がっていた。

双方がやきもきする時間を経て、稽古を始めて4ヶ月近くが経った12月初旬、とうとう新しい衣裳・お面を装着した状態での稽古を行う日がきた。稽古と言えども失敗は機密に関わる可能性もあり許されない為、慎重に準備を重ねた。

高い緊張感の中で稽古が始まると、それまで素顔で演じていた部分にお面が加わることで、演出家が考えていた役柄にピタリとハマり、まるで生命の息吹が吹き込まれたように生き生きとするのを感じた。それまで不安な空気が漂っていた稽古場の雰囲気は一変し、「さすが、国家機密だね! こんな間近で見てもわからなかったよ。」と演出家やスタッフの顔は晴れ、一定の手応えを掴んだようだった。

素顔での稽古

一方で課題も出てきた。通常、役者は眉をしかめたり、口の動かし方一つで心理状態の細かい変化を表現することができるが、お面はあくまでお面のままだ。そのため、顔ではない部分での表現力を今まで以上に高める必要がある。

その後も本番直前まで続いた挑戦、果たして最後にはどんな舞台になったのか。続きはまた来月に。

文◎王文強(おう・ぶんきょう 変面役者)