闡教十二大仙の一・道行天尊

2026年6月1日号 /

封神演義

道行天尊(どうこうてんそん)は、闡教の十二大仙の一人であり、金庭山玉屋洞(きんていざん ぎょくおくどう)の洞主である。門下には韓毒龍(かんどくりゅう)、薛悪虎(せつあくこ)、韋護(いご)がおり、宝器の降魔杵(ごうましょ)を持つ。また大量の食糧が出てくる不思議な升を有す。

物語では、十天君の十絶陣を破るために他の十二大仙と共に下界に下りたのが初登場となるが、それ以前に弟子が登場した場面で道行天尊の名前を口にしている。道行天尊自身の戦いは、趙公明に定海珠で打たれ、三霄娘々(さんしょうにゃんにゃん)に混元金斗で捕らえられるなど敗戦ばかりで活躍はしていない。一方で道行天尊の三人の弟子は、それなりに活躍の場面が見られる。

韓毒龍と薛悪虎は十絶陣の戦いで命を落とすが、その前の魔家四将(まけししょう)との戦いでは周軍の危機を救う活躍をみせる。魔家四将に西岐城を攻められ、姜子牙たち周軍は籠城して二か月が過ぎようとしていた。食料があと二日程で尽きようとしていた時、師命を受けた韓毒龍と薛悪虎がやってきて、手にした升を使い食糧庫を米で満たし危機を救う。それによりさらに十か月あまり籠城して抵抗することができた。

韋護は潼関の戦いでは余逹、澠池では守将の張奎を討ち取り、その後も多くの武勲をあげている。こうした弟子たちの活躍は、少し強引な見方をすれば弟子を育て、危機を救うために派遣した道行天尊の手柄と言えるのかもしれない。

韋護の使う宝器である降魔杵は、金剛杵の一つであり経典や伝承にのみ存在するとされる。仏教では、仏の教えが煩悩を滅ぼし悟りを求める心を表す様をインド神話に登場する武器にたとえて法具としたものとされる。日本では空海が唐での学びを終えた帰途、日本に向かい三又になった金剛杵である三鈷杵(さんこしょ)を投げた。日本に戻った空海は、高野山の松の木に引っかかっていた三鈷杵を見つけ、そこを開山の地の定めたという三鈷の松の伝承がよく知られている。

文 ◎ 二ノ宮 聡
1982年生まれ。中国文学研究者。中国の民間信仰研究。関西大学大学院文学研究科中国文学専修博士課程後期課程修了。博士(文学)。北陸大学講師。

絵 ◎ 洪 昭侯
1967年、中国北京生まれ。東京学芸大学教育学部絵画課程卒業。(株)中文産業のデザイナーを経て、2014年、東方文化国際合同会社設立。