「苦労しました!!な1か月め」千葉将士(北京大学)

留学って,交換生であればもしかしたら何かしらマニュアルがあるんでしょうけれど,奨学金生の場合は,留学先や制度によって異なりますが,手続きを自分でなんとかする場面も少なくありません。今月のレポートでは,留学したての時期によくある大きな支出に着目して,苦労した点を集めてみたいと思います。

ネットで困りまくった話

さて,北京についたわけですが,一番困ったのはネットだと思います。携帯ショップに事前に相談はしていたのですが,国内の携帯会社の海外プランは往々にして旅行者向けです。そういうわけで,店員に1年留学すると言うと「え,1年ですか……」と苦い顔をされ,いろいろ調べてもらっても「お客さまの場合ですと現地でSIMを購入なさったほうがよろしいかと……」と返答されました。やっぱり留学はまだ日本にはあまり浸透していないのかもしれません。

ここで「中国に行ってから契約するしかないなら仕方ない」などと考えてはいけませんでした。飛行機に乗ったとたん日本のネットは当然使えなくなります。私の場合は北京首都国際空港のWi-Fiにひとまずつないで情報収集をしました。

大変なのは,このまま空港を出たら一切ネットが使えないことです。当初はduroam(注1)を頼りにしていましたが,どういうわけか東北大学(注2)のeduroamアカウントでは接続できず,入学手続きのあとで北京大学独自のWi-Fi(注3)に接続しました(つまり,入学手続きまでは一切ネットもAlipay(支付宝Zhīfùbǎo)もWeChat Pay(微信支付Wēixìn Zhīfù)も使えませんでした=何も食べていません!)。事前に日本でインストールしておいた有料のVPN(注4)を組み合わせればGメールを問題なく使うことができます。

東北大で私の中国語の担任だった金先生(福島大学所属)は,中国の大学のキャンパスはまるで1つの街のように広い,と授業で言及したことがあります。北京大学もまさしくその通りで,スーパーから本屋(2軒),花屋,焼き立てのパンを売る店,コンビニ数軒,学生寮の団地,印刷屋(いっぱい。論文印刷対応),携帯ショップ(2軒),郵便局などさまざまあり,基本的には校地を出ることなく生活が成り立ちます。

しかしながら,居留許可・身体検査や口座開設のために,中国の携帯番号を取得しないわけにはいきません。Wi-Fiにつながった携帯で学内の携帯ショップ(注5)を見つけて,パスポートを提示して500元支払うと,中国のSIMを入手できます。こうしてようやくネットがなんとかなりました。そのころには,中国に到着して4日が過ぎていました。

後で知った話ですが,旅行者向けのプランに最初の数日が無料になるものがあるので,それを使うのがいいようです。また,日本にいるうちに中国対応のSIMを探しておくのもよい方法です。

寮に入った話

北京大学の自慢の寮のひとつに中関新園(中关新园Zhōngguān Xīnyuán)があります。全部で9棟あり,1号棟と9号棟はホテルとして営業しています。2号棟から8号棟までが留学生寮になっていて,私のあてがわれた棟は5号棟でした。隠そうかとも思いましたが,奨学金生の棟は5号棟に入ることになっているらしく,そのことをブログに書いている北大留学生もいましたので,堂々と書くことにします。ちなみに,中関新園のウェブサイトにあった2人部屋の写真とは異なり, 2人共用のリビングにベッドルームが2つくっついているのではなく,1つの部屋に机2つとベッド2つが置いてあり,トイレ・シャワーは各階共同です。同じクラスの交換生に聞いた限りでは,交換生はウェブサイト通りの部屋に住んでいるようですが,毎月の寮費を9万円ほど支払っているそうです。どちらがいいのかは意見が分かれると思いますが,もともとが北京の一等地なので,いずれにせよただで住めるのはうれしいポイントです。

入寮時にはデポジットを取られますが,要するに敷金です。デポジットは1,000元でした。事前に元留学生の方に尋ねたときは3,000元ほど現金で取られたとのことだったので面喰らいましたが,思ったより安く,しかも物理カードも使えました。

5号棟は英語にあふれています。みんな私があんまり英語は得意ではないのでどうしようかと思っていました。そうしたら,相手も中国語を勉強しているらしく,中国語で話しかけてくれました。日常生活では練習がてら,互いに中国語で会話しています。おそらく両方時差ボケ(注6)が抜けていなくて生活リズムがかちあわないので,今は互いに「干渉しないルームメイト」になっていますが,それはそれで背中を預け合っている感があっていい感じです。

銀行口座の話

奨学金は中国の銀行口座に振り込まれます。私の場合は中国工商銀行が指定されていましたので,中国工商銀行に行って,20元(珍しい。現金のみ)を支払って口座開設の手続きをしました。最初の奨学金が振り込まれるのは9月25日ごろと遅めなので,最初の1か月の諸費用を支払うために,Alipayなどに紐づけた日本の口座にはお金を多めに入金しておくことをお勧めします。私の場合はAlipay とカードを紐づけた口座に25万円ほど入金しておいて,おお,なんとか足りたな,という感じです。

健康診断をもう1回受けた話

居留許可を受けるためには,健康診断(体检tǐjiǎn)の結果を提出しなければいけません。理不尽な話ですが,中国政府奨学金を申し込むのに使う健康診断の診断書(外国人体格検査記録(外国人体格检查记录wàiguórén tǐgé jiǎnchá jìlù))一式は,2月中旬ごろに一度提出を求められますが,この書類の有効期間は6か月で,入国は8月末(8月レポートで言及した事情があり,私の入国は9月にずれました)なので,どう頑張っても健康診断をもう1回受けなければなりません。北京大学からなら国際旅行衛生保健センター(国际旅行卫生保健中心guójì lǚxíng wèishēng bǎojiàn zhōngxīn)の和平里本部か海淀問診部のいずれかまで赴いて診断を受けることになります。近い海淀は予約が混むので,遠いけれども大きい和平里まで行って受けてきました。検査自体は日中友好病院でしたものと大差ありません。検査代(+Alipay手数料)+書類代で374.12元でした。書類ができたら中関新園のフロントに届けてもらえます。

ちょっぴり小括 – 居留許可までの道のり

中国に来て真っ先にやることは,私から見ると大きく入学手続きと居留許可手続きに分かれたように思います。中国では住宿登記(注7)の関係上,先に入寮・入学手続きを済ませ,そのあとで居留許可を入国から30日以内に申請(注8)してパスポートを預けます。申請料はギリギリ400元ですみますが,これは居留許可証のついたパスポートを受け取るときに支払います。大きな目標に向かって少しずつ手続きを完成させていけばよく,中国語の書類がいっぱいで焦るかもしれませんが,冷静に整理していくのがいちばんいいです。後からもっとわかりやすく説明できるかも…?と思ったら,日中友好協会に勝手に「第2版」を送りつけて差しかえを依頼するかもしれません。初めて留学する立場からレポートにはいろいろ書かせていただこうと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

(注)

1 eduroam:教育や研究の利便性向上を目的に世界の教育機関・学術機関で構築・提供されている無線LANシステム。北京大学も東北大学もeduroam参加機関です。ふつう,eduroamのアカウントを持っていれば,他のeduroam参加機関でも接続することができます

2 日本の東北大学のことです。以下,「東北大学」「東北大」について同じです

3 北京大学独自のWi-Fi:「PKU」。学生の場合は学籍番号とパスワードが必要で,接続料は月10元です

4 VPN:私が採用したのはWallcatsです。年額で5,760円でした。元奨学金生の方からの受け売りですが,そういう意味でも8月の説明会には価値があります

何も食べていません:物理カードが使える店はそこまで多くなく,2週間住んでやっと1軒見つけました。そもそも中国に限らず,ネットなしで海外の街中を歩くのは大冒険です

5 携帯ショップ:北京大学には中国移動(中国移动Zhōngguó Yídòng)と中国聯通(中国联通Zhōngguó Liántōng)(ともに中国の大手通信会社)の営業所があって,中関新園に近いのは中国聯通です。留学生事務室の入っている「新太陽学生中心」の真裏,数えて2軒めのアパートの地下1階に小さな商店街がありますが,そこに入居しています。留学生用の1年プランは500元,2年プランは800元で,両社共通の価格設定でした

6 時差ボケ:日本と中国の時差は1時間です。私は日本にいたときと同じように生活していると日本にいたときより1時間ぶん早寝早起きになります。それ自体は健康的なのであえて時差ボケを直していません。ところが同室は私が寝ついても帰ってこず,私が学校に行くころはまだ寝ているので,生活リズムがかちあわず,基本的に会話がありません

7 住宿登記(住宿登记 zhùsù dēngjì):中国では,24時間以上滞在する外国人は宿泊場所を公安機関に登録しなければなりません。宿泊施設や寮に滞在する場合は,その施設が登記を行います。この証書(住宿登记单zhùsù dēngjì dān)は,居留許可の必要書類の1つです

8 入国から30日以内に申請:居留許可の必要書類をそろえたら,公安施設(北京市公安局出入境管理局中関村外国人服務大庁,もしくは北京市公安局海淀分局外国人出入境服務庁,いずれも予約制)に持って行って申請します。申請を完了したときにもらえる黄色い紙(外国人签证证件受理回执wàiguórén qiānzhèng zhèngjiàn shòulǐ huízhí)は,パスポートの預かり証です。正式な居留許可がまだ出ていなくても,この受領証を持っている外国人は中国国内で合法的に滞在することができます。

写真

北京大学東門。赤い幕には「欢迎新同学」と書いてあって,歓迎ムードです。入場ゲートは顔認証式になっていますが,(入学手続き前でも)自分の顔を機械にかざせば入れました。学外の人は身分証を読み込ませて入っているようですが,いまいちしくみがよくわかっていません

寮の写真を撮ってみました。1ヶ月弱暮らしてみた感想としては,北京の天気は極端な晴れと極端な雨がよくある印象ですが,この写真では珍しくどっちつかずな天気をしています。どちらにせよ乾燥しているので,ちょっといいワセリンで保湿しています

学食の一例。麻婆豆腐má pó dòufu(3元),炒圆白菜chǎo yuánbáicài(1元),白饭báifàn(3两,0.65元)です。私の食べる量にしては下振れしたほうですが,4.65元でもこんなに食べることができます。食堂について,詳しいことは授業のことと一緒に次回に回そうと思います