「親になりたい」という 一人でも多くの夢を叶えたい

2019年10月1日号 /

秋葉原ART Clinic院長 湯 暁暉(タン  シャオホイ)さん

1971年吉林省出身。中国白求恩医科大学(現吉林大学白求恩医学院) 日本語医学クラス卒業後、97年に東大大学院留学生として来日。2004年日本の医師免許取得。不妊治療の草分け的存在である加藤レディスクリニック(東京)などを経て17年に独立開業。自然周期と低刺激で患者の体に負担の少ない治療で実績を上げている。中国人や韓国人の患者も多い。2児の母でもある。

 

心身にやさしい不妊治療を続ける

中国白求恩医科大学(現吉林大学白求恩医学院)の 日本語医学クラスに学んだことが縁で、卒業後の1997年に東大大学院に留学生として来日。2004年に日本での医師免許を取得し、産婦人科医となった。「お産に立ち会い、命が誕生する瞬間にとても感動したからです」それが生殖医療分野に転じ、不妊治療を専門に行うようになったのには医学そのものへの探求心がある。

「最新の医療分野で、未知の部分も多い分ということですね。治療法は日進月歩で、まだ確立されていないというところに、とても興味を持ったんです」ちなみに生殖医療における体外受精が世界で初めて成功したのは1978年。試験管ベビーと騒がれたイギリスでの女児誕生である。

外国人患者の多くが中国人

山王病院や加藤レディスクリニックを経て2017年に開院。最初の患者は他院で10回以上治療(体外受精)したのに効果が出なかったという当時39歳の女性。それが1年ほどの治療でめでたく妊娠、出産した。混乱させてはいけないが、開院後初の体外受精の成功はそれよりずっと前になる。その患者は初めての治療ですぐに妊娠した。現在も、2人目を目指して通院中とのこと。

これらの実績が口コミで伝わり、2年間で訪れた患者は2000組を超えた。そのうちの15パーセント程度が外国人であり、大半は中国人だ。日本で暮らし、日常生活を送るには支障ない人たちなのだが、不妊治療領域の専門用語を理解するには、母語が最適と判断したのではないかとのこと。

中国の経済発展に伴い、観光ではなく治療目的に来日する人も増えており、その受け皿も自認している。「向こうでも不妊治療のニーズは高まっています。中国語の資料を準備していますし、中国にいても当院の情報が得られる対応窓口を考えています」 妊娠したい、赤ちゃんを産みたいという切実な願いに日本も中国も関係ない。一人でも多くの人の夢を叶えるため、また、生殖医療は最先端医療であるがゆえ自身の技術が古びないよう、勉強を怠らない。毎日わんさと押し寄せる患者を診終わった後、最新の論文に目を通す。

少し専門的になるが、体外受精には卵巣に薬で強い刺激を与えより多くの卵胞を育てる方法と、低刺激で数は少なくても自然に近い形で卵を育てる方法に大別される。どちらにもメリットとデメリットがある。その両方に携わった経験があり、現在は後者の方法で治療を行う。2人の子を自然妊娠し本当の意味で不妊患者の苦しみがわかるとは言えないが、だからこそ治療にはできるだけストレスを感じないようにしてあげたい。不妊治療は心のケアでもあると思っている。

(吉田雅英)