江子正レポート①

最近の状況:

今年は修士課程二年目に迎えました。四、五月には、JSPS特別研究員の申請に忙殺され、それ以降最も重要になっているのはやはり修士論文でした。資料調査を踏まえ、良い研究を仕上げることは、博士課程の進学、将来の長期的計画とも関わっていますので、怠慢せず全力を注ぎました。

私の研究テーマは、パリ講和会議における日本が提唱した人種平等の実現です。このテーマは、文字通り現実意義の深いテーマで、実際、学部卒業研究のとき、すでに探求をはじめました。従来の先行研究では、国際法や政治思想史的な立場から分析が展開されましたが、政治外交史的なアプローチでの研究、つまり、厳密な実証を踏まえた研究は足りなかったと考えられ、私はそういった角度から総括的な研究を目指しています。

M1のとき、主に『日本外交文書』に記録されたパリにおける日本代表団の欧米諸国との交渉過程、および『臨時外交調査委員会会議筆記』に記録された人種平等提案の日本国内での審議過程などを、史実レベルで復元してきました。しかし、概要はある程度明らかにされているものの、未だ解明されていない課題も少なくなく、これは先行研究も共通している問題点です。いろんな課題のなかで、もっとも懸念となったのは、日本政府が全権団への訓令にあげられた人種平等提案の「発案者」は具体的に誰なのか、実は定かではない。

こういった「発案者」を実証するため、先月、東京にある国立国会図書館・憲政資料室に資料調査を行いまして、幸いに先行研究で明らかにされていない史実を実証できました。

 

皇居外苑に行きました。芝生はすごくきれい。

『牧野伸顕文書』 マイクロフィルムで調べるのはやや大変。

 

心境:

やはり二十代の半ばくらいにもなりましたら、時間がスピードアップしつつあることを実感しています。私のやるべきことはなんでしょうか、この世界になにを貢献できるのでしょうか、またそれを実現するために、やはりどれほどの努力、計画が必要になるのか…毎日研究をすると同時に、これらの問題はいつも頭の中に浮かび上がっています。

コロナはすでに一年半近く世界を席巻しています。それに伴って各国では保護主義、独善主義が台頭しつつあり、政治的には過激的ナショナリズムないし危険な道徳主義、社会的には人種差別、性差別ないし社会格差問題、いろんな課題が世界を分裂させています。私が目指している研究者の道は、一体どれほど実践的な意義があるのか、いつも自分に問いながら、迷いながら反省しています。

 

これから:

これからは夏休みに入ります。8月、9月には、修士論文の前半部分を完成する予定です。また、後半部分に関連する一次資料の実証、考察も、資料調査を通して完成する予定です。7月24日に、大学附属病院でワクチンの接種(モデルナ社製)を予約済みまして、生活も研究も正常化になる見込みがあります。

来年4月は、博士課程に進学する予定です。研究に専念できた前提となったのは、この日中友好協会アリアケジャパン奨学金をいただいたことだと思います。日中両国の関係は、短期間で、政治的に超越できない、解決すべき阻害があるとも考えていますが、経済的または民間レベルの関係は、もっと友好的になるべきではと思います。この点において、私は日中友好協会の主旨に大いに賛成し、今後も同じような方向性で頑張っていきたいと思います。

学内カフェ、昼休みでの休憩時間。

 

山科の果物。 値段は安くて、種類も多様。