「“私”は戦争という歴史とつながって今ここにいる」
ノンフィクション『あの戦争から遠く離れて』でデビュー
城戸久枝さん フリーライター
21歳で長春に留学する直前、父親から古い手紙の束を渡された。目に止まったのは見知らぬ中国人のサイン。元残留孤児の父親の中国名だった。
「ショックでした。それまで父は多くを語らなかった。娘である自分が父のことを知り、記録しておかなければ、という強い使命感が芽生えた」
それから10年をかけてたどった父親の半生が今秋、1冊の本として形になった。後半は孤児らの国家賠償訴訟に関わるなど「日本生まれの残留孤児2世」という立場を意識した自身の物語でもある。
「父のことを書くことで、“私”が戦争という歴史とつながって今ここにいると実感できた。身近な人の過去だと思えば誰でも歴史をリアルに感じられる―そう発信することで、戦争の歴史を次の世代に伝えていきたい」
留学時代に訪ねた父の亡き養母の親類は、今も大切な「中国の親戚」。「血のつながりはないけれど、お互いを思いやる精神的な結びつきがある。人は国ではなく、個人のつながりから大きな輪を作れるのでは」 先日は結婚報告でこの親戚を喜ばせた。「子供には日本のお爺ちゃんと中国の曾お婆ちゃんの話を聞かせたい」 |