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「日本と中国」
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重慶に注がれる熱い視線
横堀 克己 『人民中国』編集顧問、元朝日新聞北京支局長、論説委員

口3200万人、面積は北海道並みの重慶市は、北京や上海をしのぐ中国最大の直轄市である。元は四川省に属していたが、1997年に直轄市に昇格した。長江と嘉陵江に囲まれ、両岸には高層ビルが林立し、香港を髣髴(ほうふつ)させる。三峡ダムの完成で、水位が約5メートル上昇し、5000トンクラスの貨物船が直接、接岸するという。
 この重慶に、今、全中国の熱い視線が注がれている。それは重慶が「暴力団や汚職の退治」や「革命歌を歌う」動きの震源地であり、安価な「公営賃貸住宅」の建設が進んでいるからである。そしてその政策を推進しているのが、次期の党中央最高指導部入りが噂される薄熙来(はくきらい)・重慶市党委書記であるからだ。

009年から重慶市は「打黒(ダーヘイ)」と呼ばれる暴力団一斉検挙に乗り出した。さらに汚職で1500人以上を摘発した。市内のあちこちに警官の詰所が設けられ、数台の白バイやパトカーが常駐する。携帯から通報があれば、発信地を特定し、直ちに駆けつけるという態勢だ。「おかげで治安がすっかり良くなった」と市民は言う。
 「唱紅歌(チャンホングー)」という革命歌の合唱の提唱は、重慶から瞬く間に全中国に広がった。「懐かしい」と支持する声も多い一方、一部のインテリからは「文革の悪夢を連想させる」と不評だ。刑務所内でも受刑者に『われわれは共産主義の後継者』という革命歌を歌わせている写真がネットで配信され、「視察に来た司法当局の指導者が『どこの馬鹿者が共産主義の後継者を監獄に入れたのか』と言った」というブラック・ジョークが書き込まれた。
 猛烈な住宅価格の高騰で、中国では普通の人々は「蝸居(オウジュ)=蝸牛の家)」にしか住めなくなり、ローン返済で「房奴(フォンヌー=住宅の奴隷)」になった。重慶市は10年から「1000万の農民が都市戸籍を持ち、都市に住める」よう家賃が市場価格の約60%の「公租房(ゴンズーファン=公営賃貸住宅)」の建設を急ピッチで進めている。入居は抽選で、5年住めば住宅を買い取ることもでき、独身用から3LDKまである。すでに200万人の農民が入居したという。

10月20日、私が属している勉強会「愚人会」の一行と会見した薄熙来氏は「50平方メートルの住宅は毎月500〜600元(約6000〜7200円)と安い。貧しい子どもにはミルクと卵が与えられるよう補助している」などと語り、経済発展の中でも全体が豊かになる「共同富裕」の道を強調した。
 重慶の進めている政策は確かにユニークである。それが注目を集めるのは、写真のポジとネガのような中国の現実があるからではないのだろうか。

(「日本と中国」2011年11月15日号掲載)

 
 
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