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「日本と中国」
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戦後60周年、改めて戦争の悲惨さを考えよう

高井 潔司 北海道大学大学院国際広報メディア研究科教授

「中国語で翻訳出版できないか」と、北海道新聞社の出版局長から一冊の本を預かった。題名は『約束の夏』(若松みき江著、同社刊)。帯には「戦禍の満州(中国東北部)から命からがら引き揚げる一家5人の逃避行を、8歳の少女の目で描いた長編」とある。引き揚げの苦労を書き綴った自伝的小説は多い。「まず一読してから」と預かったが、一気に読み進んだ。

束とは、1年にわたる厳しい逃避行の末、衰弱した1歳の弟を中国人夫婦に託す際、「将来、決して探しに来ない」と、母親が夫婦と交わしたものだ。これを守って一家は末弟を捜していない。だが、それによって、戦後60年間、一家は片時も戦争の記憶から解放されることはなかった。母親は90歳で永眠するまで、その罪にさいなまれ続けた。

かし、本書は悲惨な体験を被害者の視点だけで綴ったのではなく、引き揚げの過程で多くの中国人や日本人の善意で救われたことをきちんと記録している。それだけに、戦争が国家の名の下にいかに少数の無責任な政治家、軍人によって遂行され、多くの国民を巻き込み、犠牲にしたかを告発する書になっている。戦後60年、改めて戦争や現在の日本の外交を考える書としてお勧めしたい。

泉首相は、韓国・釜山で開かれたAPEC首脳会議で日増しに強まるアジアでの孤立感を糊塗するために、「一つの問題があるからといって、全体の関係を損なうようなことはしない」との発言を行い、キャッチフレーズだけの「ワンフレーズポリティックス」を重ねている。自身がその一つの問題を引き起こしている自覚がまるでない、相変わらずの無責任ぶりを披露している。
 内外の人々が先の戦争によってどれだけ多く犠牲になったのか、この時期、もう一度真剣に振り返ってみるべきだろう。
『約束の夏』の母親は東条英機が処刑された日、こう叫んだ。「東条がいなかったら、幸平を手放さずにすんだんだよ。戦争さえしなかったら、兄さんは死ななかったんだ。戦争は嫌だ。絞首刑になっても罪は消えない。私は絶対に許さない」
 小泉首相が引き起こしているのは、じつは一つの問題だけではない。日米安保の対象に台湾海峡を含めた憲法の改正に道を開き、日本の安全保障とはまるで無縁の自衛隊のイラク派遣を継続しているなど、近隣諸国の不安を高める行為はいくつもある。衆院選圧勝で日本の国民は「ワンフレーズ」のマジックに捉われたままだが、それで近隣諸国を納得させることはできない。

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